心配な病気の症状

心配な病気の症状

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  1. 心配な病気、早期発見のコツ
  2. 急に意識を失って倒れた
  3. 急いで医者へ行く頭痛
  4. 急いで医者へ行くめまい
  5. 突然死にご用心
  6. 物が二重に見える
  7. 突然に片目が見えなくなった(一過性黒内障)
  8. 頭がフラフラする
  9. 頭を打ったあとボケてきた(慢性硬膜下血腫)
  10. 顔がゆがんだ(顔面神経麻痺)
  11. 目の下がピクピクする
  12. しびれにご注意
  13. 白目の出血
  14. 声がかすれる(嗄声)
  15. 朝起きたら手が動かない(橈骨神経麻痺)
  16. ヘルペスにご注意

心配な病気―早期発見のコツ―

1、 今まであまり頭痛などなかった方に、突然に頭痛が起こった場合、「くも膜下出血」を疑うのはもちろんですが、急に片側のまぶたが下がってきた時(眼瞼下垂)は、動眼神経麻痺と言って「くも膜下出血の前ぶれ」のことがあります。
2、 急に半身の手足が動かなくなり、しばらくして元に戻った場合、「一過性脳虚血発作」と言って「脳梗塞の前ぶれ」の場合がありますが、急に片側の目が真っ暗になって見えなくなり、しばらくして元に戻った時(一過性黒内障)も、やはり「脳梗塞の前ぶれ」と考えて、精密検査を受けた方が良いでしょう。
3、 急に起こったドウキ(動悸)では、「心房細動」という不整脈が起こっている場合があり、放っておくと心臓に出来た血液の塊が脳に飛んで、脳梗塞に発展することがあります。早目に心電図チエックを受けましょう。
4、 めまいと同時に、片側の「口の回り」がしびれた時は、前庭神経核(平衡感覚に関係)と、三叉神経の核(顔面の感覚に関係)がある脳幹部というところの血液の流れが悪くなっていることが多く、「脳梗塞の前ぶれ」を疑い、すぐに検査を受ける必要があります。
5、 片側の口の回りと、同じ側の手がしびれた時は、視床、あるいは橋と言う部分の脳梗塞が疑われます。
6、 夜中に起きてトイレに行く時や朝、起きた時に「めまいやふらつき」が起こった場合は、脳幹部や小脳の脳梗塞のことがあります。
7、 急に片側の顔がゆがんで、動かなくなる顔面神経麻痺では、麻痺が起こる2〜3日前に、同じ側の耳の回りが痛むことしばしばです。
8、 ヒタイ(額)はヘルペス(帯状疱疹)がよく起こる場所ですが、普通、発疹の出る2〜3日前から痛みだけが先に出ます。痛みだけの時期ではヘルペスかどうか分からないので、発疹が出ないかどうか毎日、鏡でチエックした方が良いでしょう。ヘルペスは治療が遅れると、角膜のヘルペスを併発して失明したり、帯状疱疹後神経痛と言って、ひどい痛みに一生苦しめられることになりかねません。
9、 にわかに起こった認知症(痴呆症)では、慢性硬膜下血腫と言って頭の中に出血している場合や、脳腫瘍によることがあります。
10、 急に起こった胸の痛み(胸痛)では「狭心症」や「心筋梗塞」を疑うのはもちろんですが、急いで歩いたり、階段を上った際に、左肩が凝って重だるい感じがしたり、左手がしびれる場合も狭心症の可能性があります。なお、ノドのあたりがしめつけられるような感じがする場合も狭心症によることがあります。
11、 片側の肩が凝って痛んだり、同じ側の上まぶたが垂れ下がってきた時は、肺の頂上の肺尖部というとことにできた肺がん(パンコースト腫瘍)の場合があります。
12、 急に声がかすれ(嗄声)てきた時は反回神経という声帯を動かす神経の麻痺の場合があり、肺や甲状腺などにできものができていることがあります。
13、 暴飲暴食した後に右肩が凝ったり、みぞおちの右側の痛みが起こった時は、胆のうの病気、また、背中が痛んだ時は膵臓の病気の場合があります。
14、 毎日、夜間に咳が出る時で、肺の検査をしても異常がない場合、蓄膿症(副鼻腔炎)による後鼻漏によって、あるいは胃食道逆流症の場合があります。後鼻漏は就寝後に鼻汁がノドの奥に流れてゆくことにより咳が誘発されて、胃食道逆流は、胃酸の上部食道への逆流による刺激で起こります。

急に意識を失って倒れた。

突然に意識を失って倒れた場合、そのほとんどは失神(しっしん)と言われるものです。しかし、中には、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞、心臓病、あるいは、てんかん発作による場合もあります。

失神とは、急激な血圧低下などにより脳に行く血液が減り、脳貧血が起こって一時的に気を失うことを言います。意識喪失が15秒以上続いた場合、体や手足が痙攣することもあります。一般に、失神では倒れて横になると、脳への血流が元に戻ります。そこで、すぐに意識が戻るのが普通です。なお、ひっくり返った際に頭を打ったりする場合もあり、打撲により、稀に骨折してしまうこともあります。また、意識を失う前に、一瞬、視野が真っ暗に、あるいは真っ白に見えることがよくあります。

若い方の失神のうち多いものは、副交感神経反射のうち血管迷走反射と呼ばれるものが原因で、これが起こりますと血圧は下がり、脳に十分な血が行かなくなって一時的に意識を失うのです。この反射を起こす引き金としては、恐怖、驚き、強い痛みなどをあげることができます。また、排尿の際、咳発作時、息み動作などでも同様に失神を起こすことがあります。

頚部を走る頚動脈には頚動脈洞という部分があり、そこを圧迫されたり、刺激されたりしますと脈拍が下がって、血圧が低下します。そこで、首を締め付けるような服装、きついカラーによって、あるいは首を回した際などに失神をきたすことがあります。

一方、血管の緊張を維持する交感神経が障害されますと、血圧が下がり脳貧血からフーと気の遠くなるような感じを生じます。ひどい時には失神を生じることもあります。そのひとつは、「立ちくらみ」としてよく知られた現象で、立ち上がった際に血圧が下がって脳貧血をきたすもので、これを起立性低血圧と言います。この起立性低血圧は、低血圧ぎみでやせた若い方によくみられますが、それ以外に手足の動きが鈍くなるパーキンソン病、糖尿病による末梢神経障害の方にもよく起こります。

注意が必要な失神の原因

1、 血圧の薬が効きすぎている場合、普段から頭がフラフラしたり、立ちくらみをきたしたりすることがあります。血圧の薬を飲んでいるから大丈夫と安心しないで、時々、測ってみることが大切です。
2、 心臓の病気による失神、例えば危険な不整脈(洞不全症候群、アダムストークス発作)や、心臓弁膜症、心不全などが原因で失神をきたすことがあります。この場合、それを放置していると生命にかかわることがあります。
3、 胃潰瘍、腹部大動脈瘤破裂、胸部大動脈瘤破裂など内臓の病気からの出血により、急激な貧血を生じ、そのために失神をきたすことがありますが、その内臓の病気の症状が目立たないことがあります。
4、 年配の方の失神では、多くはありませんが、脳へ行く動脈が動脈硬化などで狭くなり、そのせいで一時的に血液の流れが悪くなって起こる場合があります。このようなものを椎骨脳底動脈循環不全、あるいは一過性脳虚血発作と言い、稀に脳梗塞の前触れの場合があります。
5、 稀な原因ですが、膠原病の一種(高安病)で動脈が狭くなって起こる場合もあり、これを鎖骨下動脈盗血症候群と言って、手を上に上げた際に失神が起こる特徴があります。また、老化現象で飛び出した頚椎の骨が動脈を圧迫して起こる場合もありますが、この場合、首をひねった際にフーッとなったりします。さらに稀な原因としては、脳への動脈のひとつである椎骨動脈が首の付け根のあたりで曲がって(屈曲)いるせいで血液の流れが悪くなることがあります(パウエル症候群)、この場合も首をひねった際に症状が出現する特徴があります。

ところで、脳貧血が起こった場合、普通、すぐに横になって休まれるでしょう。この時、直ちに、下がった血圧を上げて治そうとする働きが起こるのが普通です。すると、横になって血圧を測った時点では、むしろ血圧が普段より上がってしまっていることが多いのです。このような現象を仰臥位高血圧と呼びます。ところが、このような状況は、元々、血圧が下がって起こっているのですが、これを血圧が上がっておかしくなったと勘違いされてしまう場合があります。このような場合、単純に血圧が高いからと言って無理やり下げてはいけません。逆効果になってしまうからです。

急にフーとなった時、頭がフラフラした時
「急にフーとなった」「フラフラとする」「頭がクラクラとした」と言うような症状は、脳の血液の流れが悪くなって起こることが多く、すぐに直ったからと言って安心は出来ません。なぜなら、このような症状は、脳の酸欠(酸素欠乏、酸素の足りない状態)から起こることが多く、年配の方に起こった場合、「脳梗塞の前ぶれ」かもしれないからです。特に暑い夏に起こった時には、要注意。汗をたくさんかくせいで、体内が脱水状態となりやすく、血液がドロドロとなって、脳の血液の流れが悪くなったせいで起こることが多いからです。

                      

夏は脳梗塞の多発する季節。のどが渇いたと感じた時、血管内は、すでに水分が足りない状態になっています。そこで普段から、水分補給を怠ってはいけません。   年配の方は、炎天下に出ないようにして、歩いたりする運動は、朝の涼しいうちに行います。暑い時期の水分補給は、お茶やミネラルウオーターがよいでしょう。

          

なお、一般に夜間に血圧が下がりやすいせいで、脳の血液の流れが悪くなった時の症状は、朝起きた時に気づくことが多いのです。目が覚めた時からフラフラすると言う症状があれば、特に要注意です。

     

急いで医者へ行く頭痛

世の中で一番怖い頭痛はくも膜下出血による頭痛、それと気付かないでいると命にかかわる。

くも膜下出血による頭痛の特徴は、なんと言っても「突然に起こる」ことです。とにかく、それまでどうもなかったのに、急に頭がドーンと痛くなります。

一般に、くも膜下出血の頭痛は、未だかって経験したことのないほど激しい頭痛だとか、バットで突然、頭をなぐられたようなひどい頭痛だとか表現されます。また、しばしば嘔吐を伴う特長があります。しかし、くも膜下出血でも軽い頭痛だけの場合も結構ありますし、軽ければ嘔吐を伴わない場合もあるのです。従って、頭痛がひどいとか、軽いとかだけで判断してしまうのは危険です。

結局、突然に起こった頭痛の場合、この頭痛は「絶対にくも膜下出血ではない」と分かるまで安心してはいけません。

そして、その頭痛が、もし「くも膜下出血」であったならば、続いて再出血が起こり、それで亡くなる方が多いのです。この再出血は初回出血後、24時間以内に多いというデータもあります。そこで、突然に頭痛が起こったならば、すぐに、たとえ夜中でも医者に行かなければなりません。

医者へ行かれたら、一般にCTスキャン検査が行われるでしょう。もし、「突然に起こった頭痛」で医療機関を受診した際に、「明日、検査出来るように予約しておきましょう」などと言われたならば、「くも膜下出血が心配なので、すぐに検査して下さい」とおっしゃって下さい。

ここで問題なのが、医師の中でも、「くも膜下出血は、必ずCTスキャンに写る」と思っている方が多いことです。もちろん、CTスキャンに写っていれば、これはくも膜下出血に間違いありません。しかし、軽いくも膜下出血はCTスキャンに写らないことが結構あるのです。そのため、「CTスキャンが正常だから、くも膜下出血ではない」と診断されてしまうことが起こってしまいます。軽いくも膜下出血でも次に起こった時には、大出血となり命にかかわることもしばしばです。そこで、次に行われるのがルンバール検査(腰椎穿刺)で、腰のところから注射して、髄液という水を採取し、それに血液が混じっていないかどうかを調べるものです。あるいは、MRIを使って、MRA検査(脳の動脈の状態を写す検査)で脳の動脈にくも膜下出血の原因である脳動脈瘤(動脈のコブ)が出来ているかどうかを検査します。

片側のまぶたが下がってきたらくも膜下出血の前ぶれ

片側のまぶたが急に下がって、目がふさがってきた場合、動眼神経麻痺の疑いがあります。この症状は、近いうちに、くも膜下が起こるということを教えてくれているのです。そして、下がってきたまぶたを持ち上げて、黒目の部分(瞳孔)を見て下さい。まぶたが下がってきた方で瞳孔が、その反対側より大きくなっていれば(これを瞳孔不同と言います)、動眼神経が脳動脈瘤に圧迫されている疑いが、いっそう強くなります。

突然の頭痛とめまい

突然に頭痛とめまいが起こった場合、小脳というところに脳出血(小脳出血)が起こっている可能性があります。この小脳出血は、大きくなりますと脳幹部という大事なところを圧迫しますので、命にかかわることがあります。なお小脳出血の原因のほとんどは高血圧なので、血圧の高い方に頭痛とめまいが起こった時は、いっそうその可能性が高くなります。

突然に片側の後頸(首)部から後頭部が痛くなってからめまいがした場合、椎骨動脈という動脈の解離性動脈瘤の場合があります。この解離性動脈瘤はワーレンベルグ症候群として良く知られた脳幹部〜小脳の脳梗塞を引き起こしたり、あるいは、動脈が破れてくも膜下出血を起こしたりします。なお、この部分の椎骨動脈は頸椎の中を通っていますので、急激な頭部の回旋運動、例えば、カイロプラステイク治療、交通事故、美容院でのシャンプー後(首を思い切り後ろに伸ばした場合)、首の回旋を伴う水泳、野球やゴルフ、フイットネススクールでの首の運動などに際して発病することがしばしばです。

頭を打ってから、しばらくして、だんだん頭が痛くなってきた時は、頭の中に内出血しているかもしれません(慢性硬膜下血腫

頭を打ってから、何ヶ月かしてから頭の中に出血してくることがあります。この場合、頭痛が起こって、これが日に日にひどくなってくる傾向があります。さらに、頭痛にくわえて、脳の圧迫症状、例えば、物忘れをするとか、歩くとフラフラするとか、あるいは片方の足が段差にひっかかるようになった。履いているスリッパが脱げ易くなった。つまずいてこけやすくなったなどと言う症状に気づいた場合、さらに可能性が高くなります。

急いで医者へ行くめまい

中高年の方のめまいは脳梗塞が原因の場合がある。めまいが起こったら、安易にメニエール病だろうなどと考えない方が良い。

突然に起こった中高年の方のめまいでは、脳幹部や小脳へ血液を送る椎骨動脈や脳底動脈の血液の流れが悪くなって起こる場合が多く、時には脳幹部や小脳の脳梗塞の場合がある。この小脳梗塞の1/4の例では、脳が腫れたりして命にかかわることになるという。特に、朝起床時に起こっためまいに注意。

脳梗塞の場合、めまい以外に物が「二重に見える」「ろれつ困難」あるいは「顔面や手足のしびれや脱力」などの症状を伴うと言われるが、めまい以外にとりたてて症状がない場合も結構多い。

また、脳底動脈などが血栓でつまる場合、進行性卒中と言って、何日もかけて(長くて1週間ぐらい)、症状がだんだん悪くなってゆくことも多く、最初、症状が軽いからと言っても油断できない。

脳梗塞で有名なワーレンベルグ症候群は若い人に多く、椎骨動脈の解離性動脈瘤で起こることが多い。後頭部痛と同時にめまいが起こった時は、この病気を考える。なお、稀にくも膜下出血でめまいを訴えることがある。

脳幹部にあって、しばしば、めまいを起こす部位となる前庭神経核の真横には三叉神経核がある。三叉神経は顔面の感覚を司る神経なので、めまいと同時に口の周りがしびれたら注意が必要である。

CT検査では、同じくめまいがする小脳出血などはすぐに写るが、脳梗塞に関しては、起ってから12〜24時間ぐらいたたないと写らないことが多い。そこで、脳梗塞が疑わしい場合には、MRI検査の拡散強調像を撮影するとはっきりと分かる。

参考資料
内科めまい外来を訪れた3021例中メニエール病は18例(0.6%)に過ぎなかった。特に60歳以上の高齢者のめまいでは、メニエール病はほとんど考えなくてよい(中山杜人:2005)。
救急外来を受診しためまいの方、321例のうち脳梗塞によるものは6例、1.9%であった(埼玉医大 伊藤彰紀)。
脳血管障害によるめまいは20人に1人(5%)(Herr:1989、Hain:1995、Drachman:1972、小宮山純:2005)。メニエール病は2.4%(小宮山純:2005)。

心配なめまい
私たちの脳は、自分の体の運動や姿勢の状態を、耳の中にある三半規管などからの信号、目からの視覚情報、手足、首などの筋肉や関節からの位置に関する情報などを元に逐一、正確に判断しています。ところが、そのうちのどこかに不具合が起こり、そこから異常な誤った情報が脳に伝えられた場合、それは、ほかのところからくる情報と、うまく一致しません。このような運動や姿勢に関する情報のアンバランス(不一致)があると、脳は、一瞬、自分の体の運動や姿勢の状態が分からなくなってしまいます。この際に、「めまい」を自覚することになります。つまり、めまいとは自分の体の位置や運動を誤って感じた際に起こる症状なのです。

めまいには大きく分けて2つのタイプあります。ひとつは「回転性めまい」で、目の前や自分自身がぐるぐる回っているように感じるものです。もうひとつは「浮動性めまい」で、フラフラして真っ直ぐ歩けない、雲の上を歩いているような感じがするというものです。めまいの原因には大きく分けて2つのタイプがあり、平衡感覚を司る三半規管や前庭の病気で起こる「耳が原因」のタイプと、体のバランスを制御する「脳が原因」のタイプとがあります。そのため、病気が耳にあるのか、脳にあるのかを十分に検査して調べる必要があります。一般に「耳からのめまい」は回転性であることが多く、「脳からのめまい」は浮動性であることが多いのですが、脳の異常でも、急激に起こった場合、それに伴って起こるめまいは回転性であることもしばしばです。結局、心配なめまいとは、脳が原因で起こるもので、めまいと同時に「手足に力が入らない」、「手足がしびれる」、「ろれつが回らない」、「頭痛がする」、「意識を失う」などの症状がある時は、恐い脳卒中からくるめまい、なかでも脳梗塞を疑う必要があります。

夏は汗をかいて、血液中の水分が不足し、血液がドロドロとした状態になりやすいのです。また、暑さのせいで、血管が開いて血圧が低下しやすいことも加わって、いっそう、血液の流れが悪くなりやすいことから、夏は脳梗塞にかかる人が増える季節です。常に、「水分補給」に心がけて脳梗塞を予防することが大切です。                                                    ところで、脳梗塞を起こした方の、かなりの方が朝、起きた時に症状を自覚しています。めまいを起こす原因には、いくつもの病気がありますが、朝、目が覚めた時に、「めまい」が起こった時、あるいはフラツキが起こったような時は、そのなかでも脳梗塞を疑う必要があります。脳の中の椎骨脳底動脈(ついこつのうていどうみゃく)という血管の領域で、血液の流れが悪くなるとめまいが起こります。この椎骨脳底動脈領域に脳梗塞が起こった時は、進行性卒中と言って、何日もかけて症状が悪くなってくることがあります。そこで、最初に起こった症状が軽いからと言って油断できません。

                                                            

椎骨脳底動脈で血液の流れが悪くなると、めまい以外に、急にフーとなって倒れそうになる、急に目の前が暗くなる、立ち上がって血圧が下がった時にフーとなる、頭を動かした時にクラクラしたり、フーとなったりすると言った症状が起こりやすいので、このような症状を伴う際には、注意が必要です。

突然死にご用心!

何の前ぶれもなく働き盛りの人を襲う突然死。ある日突然「うっ!」と言った途端、倒れたまま亡くなってしまう。

それまで健康であったのに、突然に病気が起こり、24時間以内に死んでしまう場合」を突然死と呼んでいる。とくに、発病から1時間以内に亡くなってしまった場合、「瞬間死」ということもある。突然死する人は意外に多く、亡くなる人の5人に1人が病気を発症して24時間以内に亡くなっているとも言われる。近年、この突然死が社会問題として注目を集めている。

勤労者20万人での調査では、1年のうちでは4月に発生する危険性が最も高いこと、また曜日別では日曜、土曜の順で週末に多発することが分かった。運動中に起こった突然死の調査では、男性が84%を占め、10代が116人と最とも多く、2番目が50代。「自分は健康と過信」していた事例が半数にのぼった。これらの突然死は、夜間睡眠中にも起こることもあるが、興奮・飲食・入浴、スポーツなど、何らかの活動中に起こりやすい。スポーツではランニング中(118人)、水泳(68人)、野球(42人)、ゴルフ(40人)の順。55歳以上では、上位3位は、ゴルフ、ダンス、ゲートボールの順だった。

この突然死を起こす原因の約半数は心臓病。残りは脳の病気(くも膜下出血や脳出血、脳梗塞などの脳卒中)や呼吸器系や消化器系の病気と言われている。心臓病に原因するものを心臓突然死といい、症状が起こってから1時間以内と短時間で死亡することが多い。この心臓突然死は年間約5万人といわれ、その70〜80%は心室細動が起こることによる。その原因の中で特に多いのが心筋梗塞。心筋梗塞が起こって30分〜1時間で致死的な不整脈である心室細動が起こり、死亡してしまうのである。

突然死にも前触れがあることもある。例えば心筋梗塞やくも膜下出血などで突然死した人が事前に訴えていた症状には、次のようなものがある。

1、 近ごろ、体がだるく、疲れがなかなか取れない。
2、 熱っぽい状態が続いている。
3、 なんとなく体調が悪い。
4、 頭が痛い。
5、 食欲がない。
6、 時々胸が痛む。ドウキ、息切れがする。
7、 肩こりが激しい。
8、 手足がしびれる。左肩や左手が痛む、しびれる。

突然死の予防には、まず、その原因として最も多い心筋梗塞を予防することが大切で、日頃からその危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙、ストレスなど)をコントロールしておくことが大切。また、不整脈による突然死としては、QT延長症候群とBrugada症候群が多く。ともに心電図検診等で偶然発見されることが多い。ホルター24時間心電図検査は、心筋梗塞の前ぶれである狭心症や、怖い不整脈の早期発見に有効である。

突然死の原因となる脳卒中の中ではくも膜下出血が多く、平成16年にくも膜下出血によって亡くなった人は1万4,728人 その日のうちに亡くなった人が2割近くいる。半数の人は大発作を起こす前に小さな発作(前ぶれ)を起こすことが知られている。その症状には次のようなものがある。

1、 突然の軽い頭痛。
2、 めまい。
3、 物が二重に見える。
4、 片方のまぶたが下がってくる。
5、 片方の瞳孔が拡大する。

くも膜下出血の原因、脳動脈瘤の早期発見にはMRA検査が有効である

物が二重に見えます(複視)

複視(ふくし)とは、物が二重にだぶって見える症状を言います。片目ずつで見ると一つに見えますが、両目でみると二つに見えるのが複視の特徴です。片方の眼でだけで見ても、やはり二重に見えるという場合は、いわゆる複視ではなくて、例えば、乱視など眼球自体の病気を疑うべきでしょう。

もともと眼球には6つの筋肉が付いていて、これらの筋肉の働きで、いろいろな方向に眼を動かすことが出来るのです。そして、瞬時に同じ方向を向くという両方の眼球の共同作業があって始めて、物をだぶることなく、はっきりと見ることが出来ます。複視を起こす一般的な原因は、この眼球を動かす筋肉を支配している神経に障害が起こった場合です。神経に障害が起こりますと、そのせいで、筋肉の動きが悪くなり(これを眼筋麻痺と言います)、片側の眼球の動きが悪くなります。すると両眼で物を見るという共同作業がうまくゆかなくなって、複視が起ります。

複視を起こす原因には稀なものを含め、以下のように様々なものがあります。

  • 脳梗塞や脳出血などの脳卒中、特に脳幹部というところの小さな脳梗塞
  • 糖尿病や高血圧などが原因で、神経を養っている血管が細くなって神経への血流が悪くなった場合
  • 神経自体に炎症が起きている場合(多発性硬化症など)
  • 脳腫瘍や脳動脈瘤ができて眼球を動かす神経が圧迫された場合
  • 海綿静脈洞という眼球を動かす神経の通り道に炎症が起こった場合
  • 甲状腺機能亢進症などの甲状腺機能異常
  • 眼窩病変(眼窩腫瘍など、眼球が入っている骨のスペースが眼窩)、副鼻腔病変(副鼻腔炎などの炎症や癌など)
  • 重症筋無力症などの筋肉自体の病気

しかし、最も危険な複視は脳動脈瘤によって起こるものです。これは「くも膜下出血」の前ぶれで、放置すると命にかかわります。そこで、すぐに、精密検査を受ける必要があります。

この場合の症状としては、複視に加えて眼瞼下垂(片方のまぶたが上がらない)というもので、これは眼球を動かす神経のうちでも、動眼神経という神経に接して脳動脈瘤が発生していることを示しています。そして、真っ直ぐ見ている状態で、その方の眼球をよく見てみますと、真ん中にあるべき眼球が下外側によっていますし、眼球を動かした際には、これを内側に向ける(内転)ことができません。そして、瞳(ひとみ、黒目の部分)を見ますと、反対側に比べて大きくなっている(瞳孔散大)ことが分かります。

突然に片目が見えなくなった(一過性黒内障)

突然、片眼だけに「黒いカーテンがおりてくるように」、「白っぽく霧がかかるようになって」、「黒い水平線が上がってくるようにして」、「写真のネガのような見え方のようになって」、そして目が見えなくなってしまうというような症状が出現、このような症状が2〜3分の間続いて、普通、数分以内、長くても20分位で元の見え方に戻る。こういったものを一過性黒内障と言います。

眼球に行く動脈(眼動脈)は、脳に行く動脈(内頚動脈)が一旦頭の中に入って、しばらく走ってから、その後、枝分かれして、再び頭の外に出て眼球に向かいます。要するに眼動脈は枝分かれした脳の動脈のうちの1本のようなものなのです。そこで、眼動脈系の動脈硬化の程度と、脳の動脈の動脈硬化の程度とには非常に似通ったところがあります。それで、眼底検査を行いますと、眼底の動脈の動脈硬化の程度から、全身の動脈、あるいは脳の動脈の動脈硬化の程度を類推したりすることが出来るのです。一過性黒内障は、首から脳に至る内頚動脈、そして、その内頸動脈から枝分かれして眼動脈を介して眼球に至るまでの血管系に問題が起こり、そのせいで眼で必要な量の血流が供給されなくなってしまった際に生じる症状です。この原因としては、ひとつは動脈硬化が起きて動脈が狭くなっている部分に血栓(血液の固まり)が形成され詰まってしまった場合、あるいは血圧の変動、低下などをきっかけとして、狭くなった部分より先に十分な血液が流れなくなった場合。もしくは、動脈硬化が起こって狭い部分が出来ていますと、狭くなった動脈の壁の部分に血液の塊(血栓)が出来やすくなります。そして、なにかの拍子に、内頸動脈〜眼動脈にかけての部分で出来た血栓が血管の壁から剥がれ、塞栓となって先の方の動脈の方に流れて行って、そこを詰まらせてしまう場合などがあります。

この一過性黒内障は、内頚動脈系の一過性虚血発作(TIA)のひとつで、脳梗塞の警告症状と考えられています。例えば、内頚動脈の壁に出来た血栓の一部が剥がれて眼動脈の方に流れて、そこが詰まると一時的に目が見えなくなってしまうのです。一方、この剥がれた血栓が脳の動脈の方へ流れて行って、その動脈を詰まると半身の麻痺や、しびれ、言語障害が起こるというわけです。そして、完全に詰まらせた場合は脳梗塞になってしまうことになります。

なお、このような症状は、動脈硬化性病変によって、眼動脈から枝分かれして眼底に分布する網膜中心動脈が閉塞した場合にも起こります。この場合網膜中心動脈の本幹での症状は、この一過性黒内障と同じです。一方、網膜中心動脈から枝別れした枝の部分に起こった場合は、視野の全部ではなく、視力障害は視野の一部に起こります。網膜中心動脈が閉塞してしまった場合、普通、1時間以内に血流が改善しませんと、網膜機能の回復、すなわち視力の回復が期待できないと言われています。

一過性脳虚血発作

脳梗塞は突然に起こる病気。かかってからでは手遅れ、しまったと思ってからではもう遅いのです。多くはないのですが、脳梗塞には、前ぶれのあることがあります。それが一過性脳虚血発作。しかし、それが起こっても、これが脳梗塞の前ぶれであると気付くかどうかが問題。普通、数分から十数分で良くなる発作なので見逃されてしまうことが少なくありません。すぐに治ったから、もう大丈夫だろうと放置してしまう方がほとんどです。

前ぶれがあればラッキー。なぜなら、それに気づいて予防すれば、後に起こる脳梗塞を防ぐことができるのです。「疲れのせいかな?」「年のせいかな?」「風邪でもひいたのかな?」「血圧を測って高かったら、血圧のせいだろう」とか、一瞬、「エライコッチャ」と思っても、すぐに治ってしまったので、「なんだ、たいしたことなかったわ」と様子をみたり、「もういっぺん起こったら医者にゆこうか」などと、放っておかれることがほとんどです。しかし、この一過性脳虚血発作を放置すれば、20〜30%の方は数年以内に脳梗塞を発病すると言われます。また、脳梗塞を起こした人の1/3が一過性脳虚血発作を経験し、約20%の人がその1ヶ月以内に、半数が半年以内に脳梗塞を発症するとも言われます。本格的な脳梗塞を未然に防ぐことが大切なのですが、発作が短時間で終わり、その後、何もないような状態が長く続くと、ついつい油断をしてしまいがちになります。症状が消えてしまったからと言って、安心できないことを覚えておいて下さい。

どんな症状が起こるのかと言いますと、食事中に急にハシを落とした。ハシがうまく使えない。字がうまく書けない。茶碗を落としたりする。電車に乗っていて、急に足が動かなくなり、電車から降りられなくなった。まっすぐ歩いているつもりなのに、片側へ寄って行く。口から食べ物をボロボロとこぼす。ろれつ困難となり、うまくしゃべれない。片方の目が見えなくなる。特に片目だけ幕がおりるように見えなくなった。めまいが起こった。などと言う症状に注意して下さい。

 

頭がフラフラします

慢性のフラフラ感に悩んでおられるお年寄りの方はとても多く、40%近くの方が常時、めまい感を自覚しておられるという報告があります。あるいは65歳以上の人の30%がフラフラ感を訴えていた(米国での調査)とも言います。

頭がフラフラすると言う訴えの中には、めまい、立ちくらみ、歩く時のフラフラ感、眼の前が暗くなる感じ、頭がフーとする、あるいは頭がボーとするような感じなどの症状が含まれます。

もともと、年齢とともに、視力が低下してきますし、下肢の筋力なども落ちてきます。さらに耳の奥にあって平衡感覚の維持に関係している前庭(ぜんてい)、あるいは平衡感覚の情報を伝える脊髄の機能なども弱くなり、年をとると体のバランスがどうしても悪くなってきます。そんなことで、ちょっとしたことでもフラツキやすいのです。

年配の方のめまい感には、複数の原因が関係していることもしばしばで、体のバランスが悪くなってきていることに加えて、脳の血液の流れが悪くなっている場合、首の筋肉の緊張異常、血圧の薬を飲んでいる方で血圧の下がりすぎた場合、うつ状態などが原因となっている場合などがあります。

脳からくるめまい感、フラフラ感

脳の血液の流れが悪くなると、ふらついたり、めまいが起こったりします。

年配の方のふらつき感の多くは、脳の動脈に動脈硬化が起こって、動脈が細くなってきたことによって、脳の血液の流れが悪くなって起こる場合が多く、こういった病態を慢性脳循環不全と言います。脳の血液の流れが悪くなってくると、最初のころは、頭を動かしたり、急に立った時などにフーとするような症状が起こるようになってきます。こういった方に、脳のCTやMRIなどの検査を行ってみますと小さな脳梗塞などの異常が見つかることが多く、そんなことからも、脳の動脈硬化による血液循環の悪化がふらつきの原因であろうと考えられています。

もともと脳には血液の流れを常に一定に保つための脳血流の自動調節能と呼ばれる安全装置が備わっています。その働きがありますので、少しぐらい血圧が上がったり、下がったりしても脳へ流れる血流の量が増えたり、減ったりしないようになっているのです。お年寄りの脳では、この脳血流の自動調節能の力が低下していることが多く、わずかに血圧が下がっただけでも脳血流の減少をきたすことになり、そのせいでふらつき感を生じます。さらに動脈硬化をきたして細くなった脳の動脈では、いっそう血液の流れが悪くなりやすいのです。

なお、血圧が高いのを心配される方は多いのですが、血圧の下がりすぎを心配する人は案外少ないようです。しかし、血圧の薬を飲んでいる方では、時々、血圧を測ってチェックしておきませんと、知らないうちに血圧が下りすぎている場合があります。血圧が下がりすぎた時、最初に出る症状はフラフラ感です。

首からくるめまい

実は、首の筋肉には、体のバランスを保つうえで大切な平衡感覚に関する情報を調べて、それを脳へ伝えるという機能が備わっています。「肩こり」、「首こり」のひどい方では、首の回りの筋肉の緊張が強くなっているせいで、異常な情報が脳に伝わることになります。そのため「めまい」や「フラフラ感」が起こることがあります。

首の筋肉は肩や頭とつながっていますから、首の筋肉が緊張しているということは、肩や頭の筋肉も緊張していることになります。肩の筋肉の緊張は「肩こり」、頭の筋肉の緊張は「頭痛」「頭が重い」という症状になって現れます。

このタイプの頭痛を緊張型頭痛と言い、あらゆる頭痛の90%を占め、頭がしめつけられるように痛むのが特徴です。この緊張型頭痛に伴うめまい感はとても多いようで、フラッとする、あるいはフラフラするようなめまい感が主に動いた時に起こります。

うつ状態のせいで起こるめまい

現代社会では、うつ状態の方が増えています。そのうち、精神面でのうつ症状はほとんど目立たないのに、身体症状が前面に現れる仮面うつ病に注意が必要です。めまいは、不眠、頭重感とならんで、仮面うつ病の三大症状です。その際に起こるめまいはフラフラ感が多いようです。

鏡を見て顔の半分がゆがんでいるのに気付いた(顔面神経麻痺)

顔面神経麻痺でよく見られる症状

1、 耳の後が痛んで1〜2日してから顔がゆがんでいるのに気付いた(顔面神経麻痺の前ぶれ)。
2、 イーッとした時に顔の半分がゆがむ。
3、 顔の半分がこわばった感じ、あるいは、しびれたような感じがする。
4、 まぶたをしっかりと閉じられない。
5、 洗顔の際に、石鹸が目にしみる。
6、 口笛をうまく吹けない。
7、 片側の口角から食べ物がこぼれ落ちる。

ほっぺたや口唇、まぶた、額にある顔面の筋肉は、脳から出た顔面神経を介して働いています。この顔面神経が何らかの障害を受け、そのせいで顔面の筋肉の動きが悪くなった状態が顔面神経麻痺です。

この顔面神経麻痺はその原因によって、中枢性と末梢性との二つに分けられます。すなわち中枢神経である脳の病気で起こる場合と、そこから出ている末梢神経に障害が起こったことによる場合とがあります。中枢性の顔面神経麻痺の多くは 脳梗塞などの病気によって起こる場合ですが、一般に顔面だけの麻痺ということは稀で、同時に半身の手足の麻痺やしびれ、あるいは眼球運動の麻痺のせいで物が二重に見える複視など、その他の症状を伴うことがほとんどです。症状の違いとして、中枢性顔面神経麻痺の場合、前額部(ヒタイ)の麻痺がほとんど起こらないので、末梢性と違って麻痺した側のヒタイにしわができるのが末梢性との違いです。

顔面神経は耳の骨(側頭骨)の中から頭の外へ出て、次に耳下腺の中を走行し、そこから出て顔面の筋肉に分布します。そのため、末梢性の顔面神経麻は内耳・中耳・耳下腺の病気で起こります。その原因には、以下のようないろいろなものがあります。例えば、帯状ヘルペスの感染、ギラン・バレー症候群、糖尿病、頭蓋底部の病変、サルコイドーシス、ライム病、耳下腺炎、中耳炎(急性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎)、乳様突起炎などの病気で起こることがあります。しかし、末梢性顔面神経麻痺の大部分は、原因不明の特発性のものです。この特発性の末梢性顔面神経麻痺は、イギリスの医師の名前に由来してベル麻痺ともよばれています。ベル麻痺の大きな誘因としては、まず寒冷刺激をあげることができます。例えば、クーラーの冷気が顔の半分にあたっていたり、車の窓を開けて顔に風を受けて走っていたといったことでも麻痺が引き起こされることがあります。その他の引き金としては、過度の飲酒、精神的ストレス、過労などがあります。そして、その結果、顔面神経に酸素と栄養を供給する血管が細くなって、十分な酸素と栄養を受け取ることができなくなり、顔面神経の障害が起こるとする説、一方、最近、ウイルス(特に風邪の時の口の周りの水疱や口内炎をおこす単純ヘルペスウイルスや水ぼうそうや帯状疱疹をおこす水痘帯状疱疹ウイルス)が原因となっている場合が多いと考えている医師が増えていますが、まだ不明な点が多いようです。

より良い回復のため顔面神経麻痺は早期診断・早期治療が大切です。特に帯状疱疹ヘルペスウイルス(水疱瘡のウイルス)によって起こるラムゼイハント症候群の場合は直ちに特効薬である抗ウイルス剤を投与する必要があります。そこで、耳やその周囲に痛みを伴ったり、あるいは痛みを伴った水疱が出来ているのに気付いたら、すぐに医療機関を受診して下さい。

特発性末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)の症状

ベル麻痺では前ぶれの症状として、麻痺が現れる側の耳の後ろの痛みを覚えることがありますが、しかし、ほとんどの場合、何の前ぶれもなく、突然に顔面の片側の顔面の麻痺が起こります。麻痺が起こりますと、まぶたを閉じる筋肉が麻痺し、まぶたを閉じようとしても上まぶたが十分に下がりません。そこで、目をしっかりと閉じることが困難になります。麻痺がひどい時には、まぶたが上がったままで眼球結膜(白目)が見えたままになり、これを兎眼(とがん)と呼びます。この状態を放置していますと角膜が乾燥し、角膜炎を併発して失明にいたることもあります。瞬(まばたき)きがうまくゆかなくなって、顔を洗う時に、目の中に水が入ってしまったりすることもあります。また、上を見たとき額(ひたい)に「しわ」ができますが、麻痺している側では、この額の「しわ」が出来にくくなります。麻痺側では口を閉じる力が弱くなり、パ行やマ行の発音が、息がもれてしまってうまくできなくなりますし、口笛が吹きにくくなったり、ふくれっつらが出来にくくなります。麻痺した側の口角が下がるために、そこから、よだれが出たり、食べ物や飲み物がこぼれやすくなります。

多くはありませんが、麻痺した側の舌に味覚障害が起こり味が分かりにくくなることもあります。また、聴覚敏感(音が大きく、あるいは割れてやかましく感じる)、唾液分泌の減少、涙腺分泌の低下などの症状を伴うこともあります。

ベル麻痺では通常、麻痺がでてから1週間ぐらいの間は症状が悪くなることがあります。そこで一番ひどい麻痺の状態がどの程度なのかは、1週間ぐらいたたないと分かりません。一般に、麻痺が重度なほど治るまでに時間がかかり、また治り方も不十分で後遺症が残ることが多いと言えます。一般に、ベル麻痺の80〜90%の患者さんは目立たない程度ぐらいまでには回復します。神経の腫れを軽くする目的でステロイド剤の投与がアメリカ神経学会の治療ガイドラインにより勧められています。単純ヘルペスウイルスが発病に関与していることが疑われており、抗ウイルス剤を投与することも試みられています。併せて、神経の回復を早めるためのビタミン剤の投与、また星状神経節ブロックという首に注射することによって顔面の血液循環改善を図る治療方法も行われます。

なお、眼が閉じないためや涙液分泌障害のため、角膜が乾燥し角膜炎を起こすことがありますので、点眼液を使用します。

麻痺が軽度であれば1〜2か月で完全に治ります。麻痺が軽度の場合は1〜2カ月以内、中等度の場合は2〜3カ月程度で治ることが多く、後遺症の可能性もあまりありません。多くの場合、発症1カ月を過ぎた時期から改善しはじめます。一度障害された神経が障害された部位から徐々に再生してくるためです。しかし、麻痺が高度な場合、2〜3カ月でよくなることもありますが、ある程度回復して症状が固るまで6カ月前後かかることもあります。そして、完全に治る率は80〜90%程度であり、6〜12か月経過しても麻痺が残ったり、まぶたと口が一緒に動く病的共同運動、痙攣(けいれん)やひきつれなどの後遺症を残すこともあります。

まぶたの下がぴくぴくする

顔面ミオキミア(筋波動症)

顔面ミオキミアとは、眼瞼(まぶた)の下の一部が「けいれん」する病気です。顔面、特にまぶたにみられるけいれんでは、このほか、「眼瞼けいれん」と「片側顔面けいれん」があり区別が必要です。眼瞼けいれんの場合、両側のまぶたの上下が同じようにけいれんすることが多く、顔面けいれんは片側のまぶたと一緒に同じ側の他の顔面筋、多いのは口角(唇の外側の頬の筋肉)が一緒にけいれんすることがしばしばです。

ミオキミアは不規則に起こる微細な不随意運動(勝手に動く)の一種で、皮膚の表面からさざ波が周囲に波のように伝わるような感じの筋肉の収縮がみられます。自覚的にはピクピクとした感じがします。顔面ミオキミアでは、この顔面の筋肉のうち、まぶたの回りにある眼輪筋という筋肉の一部に異常な興奮が発生し、不随意に(意志とは関係なく)筋肉が収縮するために生じます。ミオキミアは顔面ではまぶたの下に起こることが多く、その原因としては、眼精疲労、寝不足、過労、ストレスによって一時的に起こることがあります。しかし、稀に脳幹部の腫瘍(しゅよう)や炎症、多発性硬化症、外傷による顔面神経損傷の後遺症などで起こることもあります。

しびれにご注意

1、 左手がしびれたり、痛んだりする時は、心臓病(狭心症や心筋梗塞)のことがあります。
2、 片方の手足が短時間でも、しびれたり、力が抜けた時は、一過性脳虚血発作と言って「脳梗塞の前ぶれ」の場合があります。脳への血液が欠乏しますと、一時的に手足のマヒ・しびれ・言語障害といった症状が起きます。めまいやフラツキと同時に片側の口唇の外側がしびれた時は、脳幹部の病気の場合があります。また、朝、起きた時に「手や足がしびれている」、あるいは「力が入らない」と言った症状に気づいた時は、脳梗塞かもしれません。
3、 散髪やパーマで洗髪の際、後ろに首を伸ばした時に、手足にしびれが走るなら、椎間板ヘルニアなど頸椎の病気の場合があります。首をのばした時に、神経の通る管が狭くなり、神経が圧迫されるためです。
4、 夜間に両足がしびれたり、痛んだりする時は糖尿病にかかっていることがあります。糖尿病神経障害では、最初に感覚神経が障害され、足の先がシビレたり、痛みを感じなくなるのです。"はだしで歩いた時に足の裏と床の間に紙が1枚あるように感じる"ことや、夜間に痛みが悪化し、不眠の原因になることもあります。
5、 少し歩くと「ふくらはぎ」に痛みが現れ、さらに歩き続けると、この痛みが強くなり歩けなくなって、4〜5分休むと症状がとれまた歩けるようになるのを「間欠性肢行」といいます。これは閉塞性動脈硬化症と言って、下肢への動脈が狭くなったり、つまっている場合と、腰部脊柱管狭窄症と言って、足への神経を囲んでいる管が椎間板ヘルニアや変性(老化現象)あるいは腰椎スベリ症などで狭くなっている場合に起こります。
6、 洗濯物を干す時や、黒板に字を書く、電車の吊り革を持つ際など「手を上げた」時に、手がしびれる場合、胸郭出口症候群の疑いがあります。首から出て上肢へ行く神経は、最初、首や肩の回りの筋肉や鎖骨と肋骨の間など、たいへん狭いところを通ります。女性で、特に「なで肩」の人は、この通路が特に狭く、神経や血管が圧迫されやすいのです。そして重たいものを持ったり、腕を上に挙げるとシビレが強くなるという特徴があります。
7、 朝起きた時や、夜中に目が覚めた際に、手がしびれたり、痛んだりする時は、手根管症候群の疑いがあります。妙齢の女性に多い病気で、手指へ行く正中神経が、手首のところで狭いトンネルを通りますが、手をよく使いますと、このトンネルが狭くなって神経の圧迫が起こるのです。
8、 きついガードルやジーンズで骨盤の周りを圧迫すると、太ももの部分へ行く外側大腿皮神経が圧迫されて、大腿部の外側のかなり広い範囲がシビレます。これを感覚異常性大腿神経痛と言います。
9、 足首の内側の踝(くるぶし)の下で神経が圧迫されると足の裏がシビレます。これを足根管症状群と言います。
10、 肘の部分で尺骨神経が圧迫されると手指の小指側がしびれます。これを肘部管症候群と言います。

手のしびれの原因

頚部神経根症

頚髄から枝分かれした神経根が、頸椎の頚椎症性変化(老化現象)で飛び出した骨や椎間板ヘルニアなどにより圧迫され、首〜肩〜腕〜手指のしびれ感や痛み、筋力低下などが起こる。

胸郭出口症候群(物を持ったり、手を上げているとしびれる)

1、 首から手に向かう神経や血管は、筋肉の隙間や鎖骨と肋骨の間などの狭いところを通る。
2、 女性で「なで肩」の人は、この通路が狭いので神経や血管の圧迫が起こりやすい。
3、 手全体、あるいは手指と前腕の小指側(尺側)がしびれたり、痛んだり、また腕・手指が冷たくなったり、握力も弱くなったりする。
4、 重たいものを持って腕が下に引っ張られると、あるいは黒板に字を書くなど腕を上に挙げているとシビレが強くなる。

肩関節周囲炎(五十肩。肩が痛くて、手が上がらない)

  
1、 筋肉や腱の老化に加え肩の筋肉や腱の使い過ぎによって、肩関節周囲に炎症が起こり、肩の痛み、また関節の動きが悪くなって、腕を上げたり、後ろに回したりすると痛むので腕を背中にまわせない、特に夜間、寝ているときに痛むことが多い。40歳代から50歳代に多い。
2、 長期間続くと、関節が全く動かせなくなる(肩関節拘縮)。関節の保温と安静が大切。痛いからと言って肩を動かさないと、関節拘縮を引き起こす。

肘部管症候群(手の小指側がしびれる)

     
1、 肘の内側を走る尺骨神経が、それを保持しているバンドにより圧迫されたり、あるいは老化により肘の骨が変形して、神経を慢性的に圧迫することが原因。
2、 初期は小指と環指の一部のしびれ感。進行すると手の筋肉がやせてきて握力が低下し、小指と環指の変形が起こる。

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

 
1、 手首を伸ばすための筋肉が肘の外側の骨に付いていて、手首の使いすぎにより、この部分に負担がかかって炎症が起こることが原因。
2、 手を使う際、例えば雑巾やタオルを絞る時に肘の外側〜前腕が痛む。安静時には痛みはない。手や手首を使う仕事の人や主婦によく起こる。

手根管症候群(朝起きた時に手がしびれて痛む)

          
1、 手首のところで、正中神経という神経が圧迫され、示指、中指を中心に起こる環指、母指のしびれと痛み。
2、 痛み、しびれは明け方に強く、手を振ると楽になる。重症になると母指の付け根(母指球)がやせてきて、細かい作業が困難となる。
3、 中高年の女性に多く生じ、手の使い過ぎが原因。

橈骨神経麻痺(目が覚めたら手が動かない)

1、 恋人を腕枕して眠った後に起こる神経麻痺として有名。頸椎から出て枝分かれした橈骨神経は腋窩を通過して、上腕骨の外側をぐるっと回って外側から、前腕の筋肉に行く。松葉杖をついていて起こることもある。
2、 手首を反らす筋肉がうまく動かないため、指を曲げる筋肉は麻痺していないのに、ものをうまく握れない。感覚障害やしびれは、親指と人差し指の付け根付近の、手の甲の三角形の小さな部分だけに起きるのが特徴。

足のしびれの原因

坐骨神経痛

            
1、 腰から出て臀部、大腿後面を下行し下肢〜足の裏に分布するのが 坐骨神経。
2、 この神経が障害を受け、腰や臀部から大腿後面、下腿の外側や後ろ、足の甲あたりまでのシビレや痛みをきたした場合、坐骨神経痛と言う。多くは腰椎椎間板ヘルニアによる圧迫などが原因。

腰椎椎間板ヘルニア

1、 腰の骨と骨の間にありクッションの役目を果たすのが椎間板。この椎間板の線維輪(周辺の硬い部分)に亀裂が生じ、髄核(中心部分)が飛び出してしまったのが椎間板ヘルニア。腰椎の4番と5番の間に好発。20〜40歳代の若い人に多い。
2、 臀部から足にかけしびれや痛み(坐骨神経痛)が起こり、せきやくしゃみでひどくなる。

腰部脊柱管狭窄症(少し歩くとフクラハギが痛んで歩けなくなる)

1、 腰の骨の中の脊柱管という管が、椎間板ヘルニア、老化による骨の変形、腰椎スベリ症などで狭くなり、その中を走る神経や血管が圧迫された状態。
2、 坐骨神経痛(下肢のしびれや痛み)、特に、しばらく歩くと下肢の痛みがひどくなり歩けなくなるが、休むとまた歩けるようになる間欠跛行が特徴。

外側大腿皮神経痛(ふとももの外側のしびれ)

1、 感覚異常性大腿神経痛とも言う。きついガードルやジーン ズで骨盤の周りを圧迫することで発症。大腿部の外側のかなり広い範囲がシビレる。筋肉の麻痺は起こらない。
2、 骨盤のちょっと下を指で叩いて、大腿部のシビレている部分に電気が走れば、感覚異常性大腿神経痛。骨盤内の悪性腫瘍が原因のことがある。

足根管症候群(足の裏のしびれ)

1、 足の裏がしびれる。しびれの範囲は足の裏全体に認められるが、特に母趾球から母趾(親指)にかけてのしびれが多く、足の甲や踵(かかと)はしびれない。
2、 足根管症状群なら、内踝(踝=くるぶし)の下を叩いて、足の裏のシビレているところに電気が走る。

踵骨棘(足底腱膜炎。カカトの痛み)

1、 朝起きて歩き始めにかかとが痛み、しばらく歩くと痛みは軽くなる。長い間座っていた後、歩きはじめた時にも生じる。
2、 かかとの裏側の骨から足指の根元まで伸びている足底筋膜が、かかとの方に過度に引っぱられると、その部分に炎症が起こって骨棘が形成されます。

足のしびれ、痛み

夜間に両足がしびれる場合。糖尿病の疑いがある。糖尿病では、末端の血管や神経が傷つくため、足のしびれや痛みが起り、さらに悪化すると無感覚になってしまい、感染を起こしやすくなる。

足〜ふくらはぎ〜太ももの後ろが痛む(坐骨神経痛)。腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症(腰の中で神経の通り道が狭くなっている病気)、腰椎すべり症(腰の骨がズレる病気)などで坐骨神経が圧迫されて起こる。腰に原因のある坐骨神経痛でも、腰は痛くない事が多いので、それと気づかなかったり、腰とは関係無いと思ってしまう事がしばしばある。

少し歩くとふくらはぎが痛くなって歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになる。(間欠性破行)腰部脊椎管狭窄症、あるいは下肢慢性動脈閉塞症(足の動脈がつまりかけている病気)の疑いがある。

三趾四趾の足の指の間がビリビリ痛みむ(モートン病)。指の間の神経が圧迫されてしびれている。つま先立ちをしたり、歩行時に足を着くたびに、足の指の付け根から指にかけて、しびれや痛みが起こる。

足の裏、土踏まずから踵にかけて、ビリビリとした痛みと、しびれが走る(足根管症候群)。足根管の部分での神経の圧迫、くるぶしの下を押すとしびれが走る。

顔面のしびれや痛み

顔面の感覚は3本の枝を持つ三叉神経が司っている。この三叉神経の3番目の枝である第3枝の経路のどこかに障害が起こると、頤部(おとがい)および下口唇に限局したしびれなどの感覚異常(頤しびれ症候群)が起こる。また、三叉神経の第2枝である上顎神経の先にある眼窩下神経に障害が起こると頬部(ほっぺた)にしびれなどの感覚鈍麻を生じる。稀に癌などの「できもの」によって神経が圧迫されて起こることがありますので注意が必要。また、脳幹部にある三叉神経核の血流が悪くなると片側の口唇の外側が短時間、しびれたりすることがあって、これは脳梗塞の前触れのことがあるので注意。
心臓の病気、例えば狭心症では、稀にアゴが痛くなったりすることもあります。

顔面の痛みを生じる主な病気

1、副鼻腔炎
いわゆる蓄膿症、額(ひたい)や頬部(ほっぺた)が痛む。うつむいた時に痛みが強くなる特徴がある。

2、緑内障
基本的には目が痛む病気であるが、ひどい頭痛や前額部(ヒタイ)の痛みを起こすことがある。

3、三叉神経痛
顔面痛の最も代表的なもので、痛みは電撃的で、「焼けるような」「電気が走るような」「ナイフや針で刺されるような」などと表現される。

4、群発頭痛
若い男性に多い。反復性頭痛の中でも最も痛く、1〜2ヶ月は痛みが毎日生じる。片側の眼の奥を中心とした強い痛みで、痛みは、「えぐられる様な」「斧で殴られたような」「焼け火鉢を眼の奥に突きさされたような」などと表現される。

5、コステン(Costen)症候群(顎関節症)
顎関節の機能障害により顔面・頚部の強い痛みが生じる。

6、帯状疱疹(ヘルペス)
発疹を伴ってひどく痛む病気。発疹の起こる前から痛むので、痛みだけの時期には診断が困難なので注意。ヘルペスと分かったら、すぐに特効薬を使用することが大切。でないと痛みが後遺症になって残る。

7、歯のできものなどの病気 持続的な顔面下部の半面のずきずきする痛みが起こり、食事または触ることで悪化します。

8、側頭動脈炎
老人に多い病気で、片側の前側頭部(こめかみ)の部分に強い拍動性、あるいは持続する痛みが起こる。膠原病の一種で、早めに治療を開始しないと失明や心筋梗塞に至ることもある。

9、頭の中の病気
脳腫瘍で起こることもある。それ以外に稀な原因としてトロザ・ハント症候群(Toloza-Hunt 頭の中の海綿静脈洞というところの病気 )、グラデニゴー症候群(Gradenigo 頭の中の錐体骨というところの病気)などで起こることがある。

鏡をみたら目の白目のところが真っ赤になって、出血していました。脳出血の「前ぶれ」ではないかと心配です。

目の白目のところを眼球結膜と言います。この眼球結膜下の微小な血管から出血しますと、白目のところが真っ赤になって、それに気がついた時にビックリすることになります。原因としては、目をこすったり、夜寝ている間にふとんの端があたったりして出血することが多いようです。この結膜出血は2週間ほどで自然に吸収されてしまいますが、結膜が血腫のために少し持ち上げられるようになって、目を動かした際にゴロゴロする感じを訴える方がいます。眼科では目の鼻血と言ったりするそうです。つまり、鼻をほじるから鼻血が出るのと同じで、目をこするから目が赤くなったりするのです。ところで、脳出血は脳の細動脈と言う細い動脈からの出血によるもので、その原因は長く続いた高血圧によります。一方、眼球結膜の出血は、これと違って静脈性、もしくは毛細血管からのもので、動脈性の出血ではなく原因も、起こり方も全く別の病態なので、脳出血の前ぶれなどではありません。なお、非常に珍しい病気ですが、内頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)と言う病気があります。このCCFでは拍動性の眼球突出、眼球結膜の充血浮腫、眼球の神経の麻痺による複視、眼圧の上昇による緑内障、拍動性の耳鳴り、拍動性の頭蓋内雑音などの症状が起こります。

声が「かすれ」ます(嗄声)

ノドの部分にある喉頭(こうとう)という所にあって、声を出すのに重要な役目をはたすのが声帯(せいたい)です。この声帯を動かす神経が反回神経(はんかいしんけい)と言う神経で、頭の中から出た迷走神経から枝分かれして声帯に分布します。そして、この神経が麻痺しますと声帯が動かなくなって、声がかすれるようになります。これを嗄声(させい)と言います。

この反回神経は、頭の中から出て下に向かって降りてくるのですが、一旦、声帯の横を素通りし、さらにノドにある甲状腺の裏側を通って胸の中まで入り、そこで心臓から出た動脈、すなわち左側の神経は大動脈弓、右側の神経は鎖骨下動脈と言う太い動脈の下を回って折れ返った後、再び上に上がって、食道の両側に沿ってさらに上に向かって上がり、声帯に至って、その筋肉を支配しています。すなわち、一旦、心臓の近くまで降りて、それから再び上に向かって走って声帯に戻ってくる神経で、その経路のどこで障害が起こっても反回神経麻痺が発生しますが、いろいろな神経の中でも長い経路を走る神経ですので、他の神経とくらべ、その途中で障害を受けやすいという特徴があります。例えば、心臓や、そこから出て、その近くを走る大動脈の拡大でも圧迫を受けたりすることもあります。

反回神経が圧迫される病気には次のようなものがあります。この神経が頭から出てくる穴を頸静脈孔(けいじょうみゃくこう)と言いますが、その部分に出来た腫瘍、頸部では甲状腺腫瘍、胸部では肺がん、食道がん、縦隔(じゅうかく)腫瘍、乳がんなどの縦隔リンパ節転移、大動脈弓部大動脈瘤(りゅう)などによって起こります。いずれにしても、最も注意しておかなければならないことは、腫瘍、特に悪性腫瘍などにより圧迫を受けている場合があるということです。


朝起きたら手が動かない(橈骨(とうこつ)神経麻痺)

橈骨神経は頸椎から出て、鎖骨の下を通り、腋窩を通過して、上腕中央部で上腕骨の外側をぐるっと回って、外側から、前腕の筋肉(伸筋)、さらに手の方に行く神経です。この神経が例えば、骨と体の外の硬い物との間で長時間圧迫されたりしますと麻痺が起こります。大量の酒を飲んで、ベンチに腕を投げ出すような無理な姿勢で熟睡してしまった場合、腕をイスの背もたれにかけたまま、あるいは恋人の頭を腕枕にしたまま寝込んでしまったときなどに起こるため、週末に多いことから、「土曜の夜の麻痺」とも呼ばれます。

麻痺が起こると、症状は、手指や手首が伸ばしにくく(垂れ手)なり、指が曲がったまま手首がダラリと垂れ下がります(下垂手)。手首を反らす筋肉がうまく動かないため、指を曲げる筋肉は麻痺していないのに、ものをうまく握れない。しびれ感と感覚の鈍さが手の背部(手の甲)で、親指と人差し指の間にある水かき部三角形の小さな部分に起こります。

ヘルペス(帯状疱疹)にご注意!

ヘルペス(帯状包疹 たいじょうほうしん)とは、水泡をともなった発疹を生じ、それが、ひどく痛む病気です。片側の胸や腰、あるいは背中や額(ひたい)などによく起こります。原因は、水痘帯状疱疹ウイルスによるもので、実は、このウイルスは子供さんがかかる水痘(水ボウソウ)と同じウイルスです。

                                                                 

ヘルペスウイルスに大人がかかった場合、これが何年もの間、神経に隠れていて、体の抵抗力が弱った時をねらって活動を始めます。すると、ウイルスが潜んでいた神経の領域に沿って、鋭い痛みが走るようになり、2〜3日してから、その部分に発疹が現われます。発疹を生じる前は痛みしかありませんので、例えば、胸なら、肋間神経痛、額なら頭痛などと間違えられたりします。何日かして、痛んだ場所に、いくつもの赤い斑点状の発疹が出現し、続いて、それぞれの発疹の上に小さな水泡が現われます。しばらくの間は、痛みが激しく、しばしば夜も眠れないほどです。

                                                                    

ヘルペスにかかった場合、一刻も早く治療を始めないといけません、なぜなら、治療が遅れると、帯状疱疹後神経痛と言う後遺症のせいで、激しい痛みが何年も続くからです。また額に起こった場合、帯状疱疹眼症と言って視力に影響が出る場合がありますから、やはり注意が必要です。

             
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