無症候性脳梗塞とは、CTやMRIなどの検査を受けた際、脳卒中の既往がない方に偶然に発見された脳梗塞のことを言い、そのほとんど(約80%)は、高血圧が長く続いたために、脳の中を走る穿通枝という細い動脈が詰まったせいで起こるラクナ梗塞(穿通枝)と呼ばれるタイプの脳梗塞です。
このような、症状のない小さな脳梗塞を、無症候性脳梗塞、隠れ脳梗塞、微小脳梗塞などと言います。しかし、中には脳の重要な動脈(主幹動脈、内頸動脈や中大脳動脈など)の狭窄、あるいは、それが詰まったせいで起こった脳梗塞の場合もあります。無症候性脳梗塞の見つかる頻度は、加齢と共に増加すると報告されています。例えば、65歳以上の3660例を対象としたMRIの研究では、28%に認められました。また日本人966例の研究では、40歳以下では認められず、80歳以上で19.3%、全例中では12.9%と報告されています。
なお、以前はMRIのT2強調像という撮影法で、白く(高信号)写るものは全て脳梗塞とみなしてしまう傾向がありました。この場合、無症候性脳梗塞との診断が過剰になされる可能性がありましたが、現在ではT2強調像で白く写り、それに加え、その部分がT1強彫像という撮影で黒く(低信号)写る3mm以上のものに限って脳梗塞と診断するようになっています。
すなわち、脳梗塞 再発の危険性が高いので、なんらかの対策をたてる必要がある。
1、 | 初発脳梗塞患者の2/3〜3/4に無症候性脳梗塞や虚血性白質病変が見つかるとされており、その頻度は同年齢の健常人にみられる無症候性脳梗塞の頻度より明らかに多い。 |
2、 | 脳ドック受診者の検討では、脳卒中の年間発症率は無症候性脳梗塞のない例からでは0.28%であったのに比べ、無症候性脳梗塞が見つかっている例では2.8%と高い。 |
3、 | 脳ドックを受けた日本人933例(平均年齢57歳)の研究では、無症候性脳梗塞は10.6%に認められ、その後1〜7年の経過中に新たな脳卒中を発症した頻度は、無症候性脳梗塞を持った人では10.1%、無症候性脳梗塞を持たない人では0.77%と有意な差を認めた。つまり、無症候性脳梗塞を持った人は、そうでない人と比べ10倍以上脳卒中を起こしやすい。 |
無症候性脳梗塞の危険因子として、最も関連が深いのが高血圧。すなわち無症候性脳梗塞の大半をしめるラクナ梗塞は、高血圧が長く続くことが原因であると考えられており、血圧の管理は、その後の脳梗塞の再発を防ぐために重要である。他の危険因子としては喫煙、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などを上げることが出来る。
なお、久山町研究では、脳出血を除く全剖検例の12.9%に無症候性脳梗塞を認め、その86.1%がラクナ梗塞であり、無症候性脳梗塞の危険因子は年齢、拡張期血圧、心房細動であった。
無症候性脳梗塞の治療
無症候性脳梗塞では、その再発予防のため、危険因子の管理、特に高血圧のコントロールが重要であり、禁煙、そして他の危険因子、すなわち糖尿病や高脂血症などの危険因子がある場合はそのコントロールも必要である。
無症候性脳梗塞の大多数を占めるラクナ梗塞の治療に関しては、抗血小板薬を使用すべきかどうかについては議論がある。
他のタイプの無症候性脳梗塞では、頭蓋内外の脳血管の閉塞や狭窄の有無を検査し、それに応じて抗血小板薬や抗凝固薬を投与する。