血液検査のみかた
40までが正常値。どちらも肝細胞の中に含まれる酵素(こうそ)で、普通でもごく少量は血液中に漏れ出ていますが、その場合は40を越えません。肝炎などで肝細胞が傷ついて破壊されますと、血液の中に大量に漏れ出てきて血液中の値が上昇します。GOTは肝臓ばかりではなく、心臓の筋肉の細胞にも含まれていますので、心筋梗塞などの際にも高くなります。しかし肝臓病の場合、GPTは特に肝臓に多く含まれている関係で、GOTの値よりGPTの値の方が高くなる特徴があります。一方、肝臓病が進行して肝硬変になるとGOTの方がGPTより高くなってきます(GOT、GPTの逆転)。なおGOTが高い場合で、肝臓と心臓あるいは筋肉のどこから出ているのか分からない時には、それを調べるためアイソザイム検査を行ないます。
男性では60までが正常値(女性では30まで)。肝細胞に障害があったり、胆嚢、胆管に病気があって胆汁の流れが悪くなったりした時に上昇します。中でも飲酒によるアルコール性の肝障害によく反応し高い値となります。なお稀に、薬物の摂取により上昇することもあります。
510までが正常値。肝臓が障害された時に、血液中に出て来て上昇しますが、LDHは全身の種々の臓器に含まれる酵素ですので、肝臓の病気の時だけに上がる分けではありません。LDHが上昇している場合、アイソザイム検査をすると、どの組織に由来するLDHが上昇しているかが分かります。
1.2までが正常値。ChEは肝臓で合成され、血液中に分泌されます。そこで、ChEの値を計ることによって、肝細胞の機能障害の程度を知ることが出来ます。具体的には急性、慢性肝炎、肝硬変などの肝障害で血液中の値が低下しますが、肝疾患が慢性肝炎さらに肝硬変と進行するにつれ、その低下の程度が強くなります。
1.0までが正常値。ビリルビンは赤血球が古くなって壊れる時に出来る黄色い色素で、胆汁から体外に排泄されます。そこで胆石や胆嚢炎などで胆道系に通過障害が起こり、胆汁の流れが悪くなった時に排泄出来なくなって上昇します。これが血液中に増えると、体が黄色くなる黄疸(おうだん)の状態となります。ビリルビンには直接型と間接型の2つのタイプがあり、病気によって、そのどちらかがより高くなりますので、それぞれを計ることによって病気の診断を行ないます。
260までが正常値。特に胆道系の結石や胆管の癌などで胆汁の流れる経路(胆道)に障害が起こって、胆汁の流れが悪くなると上昇します。
65までが正常値。胆汁の中に多い酵素なので胆道がつまり胆汁が滞ると血液中に出て値が上昇します。
なおLAP、ALP、γ‐GTPの3つは胆汁の流れが悪くなると上昇しますので胆道系酵素と呼ばれます。
最近、あまり行われない検査ですが、12.0までが正常値。血液中の蛋白質のひとつであるグロブリンの量が増えると、血清のにごりが強くなります。この、にごりの度合いがを計るのがこの検査で、慢性肝炎、肝硬変など慢性肝疾患で肝機能が低下すると、もしくは膠原病などで数値が高くなります。
6.5以下では異常。血液中の蛋白の量を示します。栄養不良の場合、また肝障害(慢性肝炎、肝硬変など)があると肝臓で作られる蛋白質(アルブミン)が減少するために低下します。
3.8〜5.3が正常値。血液中の蛋白質の主なものにはアルブミンとグロブリンがあります。アルブミンは主に肝臓で合成されるため肝障害の場合に低下します。なおグロブリンは肝臓以外の場所で合成されますので、アルブミン(A)とグロブリン(G)の比率A/G比を求めることで肝臓の状態がさらに詳しく分かります。慢性肝炎などではアルブミンが低下し、またγ(ガンマー)グロブリンが著しく増えますのでA/G比は低下します。
125までが正常値。アミラーゼは主に膵臓(すいぞう)と唾液線で産生されている消化酵素です。唾液腺や膵臓が障害され、細胞が破壊されたり、分泌が妨げられると、アミラーゼが血中に流れ込み、血清アミラーゼや尿アミラーゼが上昇するのです。
すなわちアミラーゼの高値があれば、このどちらかの臓器で炎症が起こっているか、分泌液の流出障害が起こっているか、あるいは腫瘍ができているかなどの病気が考えられます。たとえば耳下腺炎や急性膵炎、慢性膵炎、膵臓癌などの病気で上昇します。そのためにどちらの臓器から出ているアミラーゼかを知るにはアイソザイム検査を行ないます。膵臓疾患ではP型アミラーゼの上昇がみられます。
7.0までが正常値。尿酸は食物に由来するプリン体が体内で代謝分解されたあとの老廃物です。血液中の尿酸が増えますと尿酸の結晶が関節に貯まって痛風発作を起こしたり、腎臓に貯まって腎臓障害を起こしたりします。それ以外に心筋梗塞や、脳血管障害などの生命を脅かす成人病を合併する割合も高くなります。
血液中の尿酸は、一般に多量の飲酒や肉類に偏った食事で高くなります。また腎臓での尿酸の排泄障害で高くなることもあります。一般に8mg/dlを越えると治療が必要となります。
20までが正常値。血液中の尿素と言う形での窒素の量。蛋白質が体内で代謝されて出来たアンモニアは、肝臓で解毒されて尿素の形となり、腎臓で瀘過(ろか)されて尿中に排泄されます。腎臓の機能が低下しますと血液中の尿素の量が増えます。そこで血液中の尿素窒素(BUN)の量は腎臓の機能の程度を反映しますが、一般に腎臓の機能が1/3以下に低下して始めて上昇してきます。すなわちBUNは腎臓の機能がかなり悪くなってからでないと上昇しませんので、腎機能障害の早期診断には注意が必要です。他に消化管出血などでも上昇します。しかし、この場合にはBUNは上昇しますが、クレアチンの上昇はみられません。
1.2までが正常値。血液中のクレアチニンの濃度。クレアチニンは腎臓で瀘過されますので、腎臓の機能が低下すると血液中の値は上昇します。すなわちクレアチニンの値は、腎臓の機能を反映することになり、値が高い時には慢性腎炎や腎不全の疑いがあります。しかし、クレアチニンも腎機能がかなり低下してからでないと上昇しませんので注意が必要です。
腎臓の機能を表す指標として、血液中のBUN(尿素窒素)、クレアチニン値がありますが、いずれも腎機能が正常の1/3程度にまで下がらないと上昇しないのです。そこでこの検査値だけで判断していると、腎機能が相当悪くなってからでないと分からないのです。eGFRは腎機能の悪化を早期に知るための検査です。eGFRは血液から直接測定しているのではなく、血清クレアチニン値と年齢と性別から計算します。この数値は、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになります。
さまざまな心臓の病気が原因で心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器が必要としている血液を十分に送り出すことができなくなった状態を心不全と言います。つまり心不全とは病気の名前ではなく、心臓が衰えた状態をあらわす言葉なのです。この状態が急激に起こった場合を急性心不全と言い、心臓機能が徐々に低下していく場合を慢性心不全といいます。心臓のはたらきが低下してきますと、運動を行った際に動悸や息切れがしたり、ひどくなると呼吸困難や足のむくみなどの症状が出現します。
最近、心不全にかかっているかどうかを血液検査で調べることができるようになりました。それがNT-proBNPです。心不全などによって心筋細胞に障害が起きると、NT-proBNPが血中に現れ、病気の進行と共に血中濃度が高まることが知られています。健常人のNT-proBNP血中濃度は極めて低く、心不全の重症度に応じて血中濃度が上昇するのです。
体内にウイルスや細菌などの異物が侵入しますと、それを排除しようとする防御反応が起こります。これがいわゆる免疫機構と呼ばれるものです。具体的には異物を攻撃し、排除する目的で血液中に抗体が作られます。抗体はひとつですべての異物に対応するのではなく、侵入した異物それぞれについて別々の抗体が作られますから、何種類もの抗体が出来ることになります。 日常よくみられる肝炎ウイルスにはA、B、Cの3つがあります。肝炎ウイルスに感染すると、血液の中にそのウイルス(抗原)に対する抗体が出来ます。この抗体を測ることによって、どのタイプの肝炎にかかっておられるかを知ることが出来ます。
A型肝炎
急性肝炎になった人がA型肝炎かどうかを判断するには、血液中のIgM型 HA抗体を計ります。この抗体は感染の初期の段階に出て、やがてIgG型 HA抗体に変ります。そこでIgM型 HA抗体が陽性ならA型肝炎に感染していると判断され、IgG型 HA抗体が陽性なら過去にA型肝炎にかかったことがあると診断されます。
日本人では50歳以上の方の90%以上がIgG型 HA抗体を持っていますから、ほとんどの方は知らないうちにこれにかかっている分けです。
B型肝炎:HBs抗原
HBs抗原が陽性であればB型肝炎ウイルス(HBV)に感染していることを示しています。B型肝炎ウイルスの構造を見てみますと、外側の部分をHBs抗原と言い、その内側にはHBc抗原があります。そしてさらにそのHBc抗原の内側にHBe抗原があります。そして体内にウイルスがいる場合には、これらの抗原が血液中で検出される分けです。
B型肝炎ウイルス(HBVと言います)に感染した時、血液中に出てくるHBs、HBeのふたつの抗原と、それぞれの抗原について作られたふたつの抗体、およびHBc抗体を調べて病気の状態を知ります。
急性肝炎の場合には、血液中のHBs抗原が陽性となり、HBc抗体の値が低く、IgM型 HBc抗体の値が高くなると言う特徴があります。B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアーは、B型肝炎ウイルスに持続的(慢性)に感染している状態で、肝臓に異常の認められない状態を言い、HBVキャリアーのことを無症侯性キャリアーと言います。キャリアーが肝炎を発病した場合には慢性化する可能性があります。特にキャリアーである母親の血液中のHBe抗原が陽性の場合は、ほぼ100%子供に感染することが分かっています。
C型肝炎:HCV抗体
1989年に始めてC型肝炎ウイルスの存在が確かめられ、以後HCV抗体が測定出来るようになりました。C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べる検査がHCV抗体検査です。HCV抗体を測定して陽性ならば、過去にC型肝炎にかかったか、現在もかかっていることを示します。HCV抗体陽性の場合、HCVに一度は感染したことを意味しますが、現在も持続感染をしている人と、治癒してしまっていて、ウイルスのいない人が含まれます。そこで、次に精密検査として、HCV核酸増幅検査(HCV-RNA定量検査)という、血液中にHCV遺伝子があるかどうかを調べる検査を行います。これが陽性ですと現在HCVに感染していることを意味します。
AFP (アルファフェトプロテイン)
癌が出来ると血液中の増えてくる腫瘍マーカーのひとつで、肝癌の際に増加してきます。C型肝炎の方では、のちに効率に肝癌の発生がみられます。その早期発見のため用いられます。
PIVKAーU
ビタミンKの欠乏により血液凝固因子であるプロトロンビンの生成が障害された時に血液中に出てくる異常プロトロンビンで、AFPが陰性の癌に対して陽性を示すことがあります。 脂質検査:動脈硬化の原因となる血液中の脂質の量を測ります。
血液中のコレステロールの量。220mg/dl以上では治療が必要で、動脈硬化を防ぐには200mg/dlが望ましいとされます。コレステロールや中性脂肪が増え過ぎた状態を脂質異常症(高脂血症)といいます。「コレステロールが高」くても、普段は自覚症状はありませんが、症状がないからといって放置していると、動脈硬化が進んで脳梗塞や心筋梗塞にかかることになります。
コレステロールが高いせいで起こるのは、脳や心臓などの太い動脈に起こる「粥状(じゅくじょう)動脈硬化」で、このタイプをアテローム硬化とも言います。コレステロールが高いと、血管の壁にコレステロールが染み込んで、壁の中に「アテローム」というお粥に似たドロドロとした塊ができます。このアテロームによって血管の壁が次第に内側に盛り上がり、血液の通り道が狭くなって最後には詰まってしまうことになるのです。
血液中のコレステロールはコレステロールや動物性脂肪を多く含む食事の取りすぎで高くなりますが、コレステロールの高い方の約30%は遺伝性、家族性のものと言われています。中でも270mg/dlを越えている場合には、遺伝性、家族性の可能性が高いと言われます。なお女性は更年期を過ぎると、女性ホルモンの分泌が低下し、そのせいで食事とは関係なく、急速に血液中のコレステロールが上昇します。それに伴って心臓病などの動脈硬化による病気が増えてくるのです。
コレステロールは高い方が問題となりやすいのですが、低すぎてもいけません。コレステロールは血管の壁の重要な成分のひとつですので、例えば、コレステロールの値が150以下の方では血管の壁が弱くなって脳出血の可能性が高くなると言うデーターもあります。
コレステロールの大部分は肝臓で合成されており、肝硬変などで肝臓の働きが低下すると、血液中の値が下がります。そこでコレステロールは肝障害の程度を判断する指標ともなります。また、胆管がつまって胆汁の流れが悪くなり閉塞性黄疸が起こりますと、コレステロールを胆汁を通じて体外に排泄することが出来なくなるため増加してきます。
コレステロールはLDL、HDL、VLDLの3つの成分に分かれますが、LDLは、肝臓でつくられたコレステロールを各臓器に運ぶ働きをしている低比重リポたんぱくのことです。細胞内に取り込まれなかった余剰なコレステロールを血管内に放置し、動脈硬化を引き起こす原因となります。すなわちLDLコレステロールのことを別名、悪玉コレステロールと呼び、これが増えることが動脈硬化の主な原因です。そこで動脈硬化の予防には、このLDLコレステロールを下げることが大切です。
LDLコレステロールの基準値は、一般男女で60〜139mg/dlですが、閉経後の女性の基準値は、70〜159mg/dlと高めに設定されています。異常値と判断されるLDLコレステロールの値140mg/dlは、総コレステロールでは220mg/dlに相当すると覚えておくとよいでしょう。
なおLDLコレステロールは血液から直接測定するより、以下の計算式で値を求める方が正確であると言われています。
LDLコレステロールの算出方法
LDLコレステロール=
総コレステロール−HDLコレステロール−(中性脂肪)÷5
注)ただし中性脂肪が400mg/dl以上の場合は、この式はあてはまりません。
40〜70が正常値。別名、善玉コレステロールと呼ばれます。HDLコレステロールは血管の壁にこびりついた余分なコレステロールを回収して肝臓に運び燃やしてしまいます。すなわちHDLコレステロールには動脈硬化を予防する働きがあるのです。そこで動脈硬化になりやすいかどうかは、総コレステロールの値だけではなく、同時に、このHDLコレステロールの値を考慮して考える必要があります。例えば総コレステロールの値が高くても同時にHDLコレステロールの値が高ければ心配ない場合もありますし、逆に総コレステロールが正常でもHDLコレステロールが低ければ治療が必要な場合もあります。
両者のバランスを考えるには、総コレステロールとHDLコレステロールから動脈硬化指数と言う値を計算して考えるとよく分かります。動脈硬化を防ぐには、一般に動脈硬化指数の値が3以下になるようにすると良いと言われます。HDLコレステロールは一般に喫煙、運動不足、肥満などで低くなると言われています。
なお血液中の中性脂肪が高くなるとHDLコレステロールは低くなります。HDLコレステロールの基準値は40〜119mg/dLです。元々、HDLコレステロールは女性が男性よりも高めです。これは加齢と共に女性ホルモンが減少して、体内のコレステロールが代謝されずに蓄積されるからです。のため、以前の基準値は男性が40〜86mg/dL、女性が40〜99mg/dLと、女性のほうが基準値は高めでしたが、近年の調査では健康を害するほどの男女差はないとの見解で、2012年4月に統一されました。
血液中の中性脂肪の90から95%はトリグリセライドですので、中性脂肪のことを別名トリグリセライドとも呼びます。この値が150mg/dl以上の場合には治療が必要と言われます。中性脂肪の検査値は食事の影響を強く受けますので、正確な値を知るためには、少なくとも12時間絶食した上で検査を受けることが大切です。中性脂肪は食事で摂取するエネルギー量が多すぎる(食べ過ぎ)と高くなり、肥満の方ほど高くなります。またアルコールの取りすぎでも増えます。
血液中の赤血球の数、これが少ないと貧血、多いと多血症と言います。貧血の中で日本人に最も多いものは、赤血球の材料となる鉄が不足するために起こる鉄欠乏性貧血です。その他、ビタミンB12 が不足することによって起こる貧血、また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍など消化管から出血する病気によって貧血になることもあります。
血液中にどのくらいヘモグロビンが含まれているかを示します。赤血球の中身の60%を占めるのがヘモグロビンです。赤血球は肺で酸素を受取り、全身への酸素の運搬を行なう役目を果たしていますが、そのために働くのが赤血球の中にあるヘモグロビンです。ヘモグロビンが10mg/dl以下の場合を貧血と言います。
一定の容積の血液中に赤血球成分がどのくらい含まれているかを示す値です。ヘマトクリットが30以下の場合を貧血と言います。
※赤血球数、Hbヘモグロビン、Htヘマトクリットの3つは貧血の診断に欠かせない検査で、これらの値から赤血球の大きさや、1個の赤血球中のヘモグロビン濃度を推定し貧血の原因の推測したり、その程度を知ることが出来ます。
正常値は3600から9500。白血球は、病原体など体の外からの侵入物(主に最近)が体内に入った場合に、それから体を守る働きをしています。そこで血液中の白血球数を計って、もし、その数が正常より上昇しているならば、体内で炎症性疾患、特に細菌感染などが起こっていることが分かります。炎症性疾患の代表的なものとしては、肺炎、胆嚢炎、虫垂炎、扁桃腺炎などがあります。一方、白血球数が極端に低下している場合には、細菌に対する防御がなくなり、重症の感染症を引き起こす可能性が出てきます。
正常値は11万から36万。血球のうちのひとつで、血少板は血液が凝固するのに欠かせない役割を果たしています。そのため、その数が減少すると出血がとまりにくくなります。また血少板数は慢性肝炎や肝硬変の進行に伴って減少してくることが分かってきました。そこで、その減少の程度により肝臓病の重症度を判定するのに利用されます。すなわち肝細胞が壊れると、それに応じて脾臓(ひぞう)が腫れて、血少板を破壊する脾臓の機能が亢進し、血少板の数が減ってきます。それで血少板の数の減り具合から、肝臓の病気の重症度を判断することが出来るのです。例えば血少板の数が20万であると正常で、1O万以下になっていますと肝硬変、20万から10万の間が慢性肝炎と考えられます。
白血球には好中球、好酸球、リンパ球など5つの種類があります。 感染症や炎症の場合には、そのうちの好中球の割合が増加します(核の左方移動)。そこで、白血球の分類を測ることによって感染症にかかっているかどうかなどを知ることができます。また好酸球が増加している場合には、喘息や尋麻疹、花粉症などのアレルギー性の病気が考えられます。
※アレルギーを疑う時の検査としては、その他に非特異的 IgE(アイジーイー)検査があります。アレルギーは一般に空気中の花粉、ダニ、ほこりなど(吸入性)やサバ、ソバなど(食事性)が抗原となって起こりますが、どれが原因なのかを調べることも出来ます。
血液が凝固し止血するには、まず血管が破れたところに血小板が集まって血栓を作り、破れた部分をふさいで止血します。さらに、血液中に溶けているフィブリノーゲン(線維素)を水に溶けないフィブリンに変えて、血小板が作った血栓のすきまを埋めて止血を完全にします。このフィブリンができるまでには、血管の内外の12の因子(血液凝固因子)が関与し巧みにコントロールしています。
プロトロンビンはこの仕組みの因子のひとつです。プロトロンビン(第U因子)は、肝臓で作られ、カルシウムイオン(第W因子)などの作用でトロンビンに変わり、これがフィブリノーゲン(第T因子)をフィブリンに変えます。プロトロンビン時間(PT)は被検血漿に、カルシウムイオンと組織トロンボプラスチンを添加して、フィブリン析出までの時間を測定します。
最近よく使われる国際標準比PT-INRは、プロトロンビンが血液凝固に至るまでの時間プロトロンビン時間(PT:prothrombin time)を、国際的に標準化した数値(INR:International normalized ratio、国際標準比)に置き換えたものです。通常ワルファリン(商品名:ワーファリン)という薬の効き具合を知るために行われる検査です。
空腹時にとった血糖の値は110mg/dlまでが正常値。食事をとると一時的に血中のブドウ糖(血糖)の値は上がりますが、普通、2時間ぐらいでもとの値にもどります。これは血糖が上がると膵臓(すいぞう)からインスリンと言うホルモンが分泌されて血糖値を下げるように働くからです。糖尿病の方では、インスリンの量が不足していますので、食後2時間くらいたっても血糖値は下がらず高いままとなります。食前であろうと食後であろうと、もし採血した血糖が200mg/dlを越えている時には、糖尿病と診断して差し支えないと言われます。
血糖が高くても、普通、痛くもかゆくもありませんが、これを放置すると視力障害、腎臓の障害、動脈硬化から心筋梗塞、脳梗塞の原因となります。
ブドウ糖75グラムを飲んだ後、30分から1時間ごとに血糖値をはかる検査です。
正常の方では2時間後の血糖値は140mg/dl以内ですが、これが200mg/dl以上であれば糖尿病と診断されます。またこれが140から200の間にある場合、耐糖能障害があると言い(境界型)、ブドウ糖の処理能力が低下しているけれどもはっきりとは糖尿病とは言えないと言う段階にあると解釈されます。しかし、この場合は今後、糖尿病に進行する可能性が高いので、厳重に経過をみて行く必要があります。なお糖尿病の方でも空腹の時間帯に測りますと正常の方と同じくらいの血糖値であることもあります。
膵臓のインスリンの分泌能力を調べる検査で、ブドウ糖を飲んだ後の血液中のインスリンの量の変化を調べます。普通は糖を飲んだ後の血糖の上昇を抑えるため、血液中のインスリンの量は急速に増加します。この変化が非常にゆっくりである場合には糖尿病と診断されます。また糖尿病の診断だけではなく、糖尿病の方のインスリン分泌能力の程度を知って治療方針を決定する上でも大切な検査となります。またインスリンだけでなくCペプチドと言うホルモンを調べることもあります。
糖尿病にかかっておられるかどうか、あるいは糖尿病の方の血糖のコントロールがうまくいっているかどうかを知る検査のひとつです。血糖は測った時間によりさまざまな値となります。すなわち食事の影響を受け、食後に高くなり空腹時には低くなります。赤血球の中にあるヘモグロビンは血糖の高い状態が続くと、血液中のブドウ糖と結びついて糖化ヘモグロビンとなります。そこで、この糖化ヘモグロビンの量を計ると過去の平均した血糖の状態をまとめて知ることが出来ます。
HbA1c(ヘモグロビンA1C)は、血液検査をした日から過去1ヶ月月間の血糖の状態を現し、血糖の高い状態が続くと高い値になりますが、直前の食事の影響は受けません。正常値は6.4%までです。なお糖尿病の方では合併症を防ぐためHbA1cを7%以下に保つことが大切です。
腎機能の障害が起こりますと、尿検査で蛋白が陽性になる前にアルブミンが漏れて出てきます。そこで主に糖尿病による腎臓障害を早期に知る目的で測定されます。すなわち、糖尿病の方ではこの検査を定期的に行なう必要があります。
CPKは筋肉に多量に含まれる酵素で、骨格筋もしくは心筋(心臓の筋肉)障害で上昇します。中でも心臓の筋肉への血流が途絶えて筋肉が死んでしまう心筋梗塞の診断の際には欠かせない検査です。その他、ミオオパチー(筋肉病)、特に筋ジストロフイー症などでも上昇します。血液中のCPKが高い場合、それが骨格筋(CPK-MM)と心臓(CPK-MB)のどちらから出たものかが分からない時には、アイソザイム検査を行ないます。
急性心筋梗塞の検査です。トロポニンは、筋収縮機能を調節している物質で、心筋、黄紋筋の収縮調節をつかさどる蛋白です。心筋トロポニンTは、心筋特異性の最も高い検査です。心筋壊死を反映して血中レベルが増加します。急性心筋梗塞では約3〜6時間後から上昇し、8〜18時間後に最高値に達し、2〜3週間後まで有意な上昇が続きます。
正常では陰性。CRPは体内のどこかに急性の炎症あるいは急性の組織崩壊があれば上昇します。これが陽性と言うことは体内での急性病巣の存在を示しており、また陽性の程度により炎症病変の強さの程度を反映します。例えば、肺炎、腎盂炎などの感染症などがあれば陽性となります。つまり、どこかに感染症があるのではと疑う時に行われたり、リウマチの患者さんの重症度を知るための検査として利用されたりします。同様の検査に血沈検査などがあります。
リウマチ因子 (RA、RAHA)
膠原病のひとつである慢性関節リウマチの診断、および治療中の指標として使用されます。リウマチ因子の検査にはRAテストとRAHA検査があります。
RAテストは慢性関節リウマチの80%の方が陽性を示しますが、一方、正常の方でも2〜3%の方が陽性を示しますし、また他の膠原病や慢性肝疾患の方のうちの10〜60%の方が陽性を示します。さらに、リウマチの方でも5%の方は陰性で、すなわちリウマチ因子が陽性に出ないリウマチの方もいます。
RAHA検査の方が慢性関節リウマチに特異性が高い検査であると言われています。
抗CCP抗体
リウマチを診断・治療していくうえで、いま最も重要なのが抗CCP抗体です。抗CCP抗体は、今までのリウマチ因子検査より、はるかに鋭敏であり、正確にリウマチの発症を予測できる検査です。早期リウマチに対する診断確定度も高く、他の検査でリウマチかどうか診断がつかない場合や現時点でリウマチ診断基準に満たない症状の患者さんでも、この抗CCP抗体で陽性であれば、リウマチであるという可能性は高くなります。
抗核抗体
リウマチの患者の20〜30%で陽性になります。ただし、まったく健康な人でも4%(女性ではさらに高率)が陽性、高齢者では健康人でも30 %も陽性に出ます。
MMP-3
関節リウマチ(RA)は全身の複数の関節に強い炎症が起こる自己免疫疾患で、特に関節の内部を覆っている滑膜細胞に炎症と増殖が起こります。そして次第に滑膜から軟骨、骨へと波及し、やがて関節自体を破壊して関節変形をもたらします。MMP-3(マトリックスメタロプロティナーゼ-3)は線維芽細胞や滑膜細胞、軟骨細胞から分泌される蛋白分解酵素で、軟骨を構成するコラーゲン等を分解し、軟骨の代謝回転に重要な役割を果たしています。
関節リウマチでは増殖した滑膜細胞からMMP-3が産生されるためMMP-3値は関節リウマチにおける滑膜増殖の程度を反映するといわれています。血清MMP-3濃度が高値を示す場合、または上昇してきた場合は関節破壊の進行が早いことが予測され、逆に、薬剤による治療効果により病態が安定するとMMP-3の値は低下します。すなわち関節リウマチにおける滑膜増殖と関節破壊の予後予測のマ−カ−として有用です。
なおMMP-3は変形性関節症や痛風などの関節疾患や多くの膠原病では上昇しませんが、全身性エリテマトーデス、乾癬性関節炎、リウマチ性多発筋痛症、糸球体腎炎でも高値を示すことがあります。
゛のど゛のところにある甲状腺は、血液中にある無機ヨードを原料として甲状腺ホルモンであるT3、T4を合成し、それを蓄積しておいて、必要な時にそれを血液中に放出する働きを行なってます。なお甲状腺の機能は下垂体(脳のところにある)から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)によりコントロールされているのです。
T4は甲状腺のみで合成されていますが、T3はその20%が甲状腺で合成されているものの、他は肝臓や腎臓で合成されています。血液中ではT3、T4のほとんどは甲状腺ホルモン結合蛋白とくっついて存在し、一部が遊離型のFT3、FT4として存在します。
そこで、血液中のFT3、FT4、TSHなどを計ることによって甲状腺の機能異常すなわち甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症の診断、あるいは治療の指標として使用されるのです。
健康な人でも1日に75〜150mg程度の蛋白が排泄されていますが、この程度の量では陽性にならないように出来ています。尿蛋白が陽性になる時には、急性もしくは慢性の腎臓の病気が考えられます。また糖尿病や高血圧で二次的に腎臓の障害が起こっても陽性となりますが、糖尿病など腎臓が悪くなりやすい病気の場合、尿蛋白陽性となる前の異常を早期に発見するため、尿蛋白検査より鋭敏な検査である尿中アルブミン検査が定期的に行なわれます。
尿の中に血液が混入していても、ごく微量なら肉眼では分かりません。試験紙による検査を行なうと微量の血液でも見つけることが出来ます。検査が陽性の時には、尿路結石、あるいは腎臓や膀胱の病気の場合もありますので精密検査を行ないます。
尿を遠心分離器にかけると、尿に浮遊していた物質が試験管の底に貯まります。顕微鏡で見た1視野の尿沈査のうに白血球が3個以上ある時には、異常と診断されます。尿に白血球が見られる時には膀胱炎や腎盂腎炎など尿路の感染症が考えられます。また尿沈査に円柱や上皮細胞が見られる時には、腎臓など尿路の病気が考えられます。
尿中α1マイクログロブリン
尿中NAG検査は腎臓および尿路系の異常を早期に発見するために行なわれます。なお尿中α1マイクログロブリン検査も同じ目的で行なわれます。
尿中のNAGは腎臓の実質細胞(詳しくは尿細管細胞と糸球体構成細胞を指しています)から放出されたものであり、尿中のNAGを測定し、それが増加している場合には、腎臓の実質細胞が障害されていることが分かります。
便の中に血液が混入しているかどうかを調べる検査。以前の検査では、検査の前に肉などをお食べになると検査が陽性になってしまうことがあり、検査の前に潜血食と言う特殊な食事を食べて頂く必要がありました。しかし最近の便潜血検査は人間の血液の中のヘモグロビンのみに反応する検査になりましたので、その必要がなくなりました。この検査は特に、大腸癌の早期発見に有効で、その他、知らない内に出来ている胃潰瘍などからの出血を早目に発見するのにも役立ちます。
骨代謝マーカーです。骨粗鬆症の治療の選択にあたり、「尿NTX(尿検査)」と「BAP(血液検査)」という検査を行い、骨代謝の具合を見て将来の予測をたてます。
骨は「一度できたら、一生同じ骨成分」ではなくて、骨の中では常に「古くなった骨を取り除き、新しく骨を形成する」という作業が繰り返されているのです。古くなった骨を破壊してカルシウムを血液中へ溶かす工程を骨吸収と言います。この骨吸収を行う作業を破骨細胞が行うのです。破骨細胞によって溶かされた部分へは、コラーゲン・リン・カルシウムなどをくっつけることで新しく骨を作る作業を行います。これを骨形成と呼び、この骨形成は骨芽細胞によって行われます。骨粗鬆症は、この骨吸収と骨形成のバランスが崩れるために起こるのです。
正常の場合ですと、「骨吸収 = 骨形成」なのですが、骨粗鬆症の場合では、「骨吸収 > 骨形成」となっています。つまり破骨細胞は骨から古いカルシウムを放り出します。これに対し、骨芽細胞は骨に新しいカルシウムをくっつける作業を行います。そして「NTX」は破骨細胞の活動量を示しており、「BAP」は骨芽細胞の活動量を示しているのです。
若い人では、NTXは35以下、BAPは29以下ですが、骨粗鬆症にかかられた高齢者ではNTXが35以上、BAPが29以上の数値を示していることが多いようです。骨代謝回転の高い場合には積極的な骨粗鬆症の治療が必要となるのです。
尿酸が高くなると痛風(つうふう)が起こります。典型的には、ある日突然、足の親指の付け根が赤く腫れて痛むのですが、この痛みは激烈で、これを痛風発作と呼びます。痛みは普通1週間から10日で治まりますが、半年から1年たつとまた発作がおこります。この痛風発作の原因が尿酸なのです。
不要となった血液中の尿酸は、尿の中に排泄されます。尿酸が高い状態が続くと、余分な尿酸の結晶が関節内に沈着し炎症が起こることによって痛風発作が起こるのです。一方、尿酸が高くなると腎臓にも尿酸が溜まりやすくなります。すると腎臓の障害が起こってきます。それ以外に心筋梗塞や、脳血管障害などの生命を脅かす成人病を合併する割合も高くなります。
尿酸が高くなる原因は(1)食べ過ぎ、肥満、(2)酒(アルコール)の飲み過ぎ、(3)激しい運動、(4)ストレス、(5)高血圧などで、痛風の患者さんの60%には、肥満があり、肥満の度合いが大きいほど尿酸値は高くなります。
なお約20%ぐらいの患者さんでは、腎臓からの尿酸の排泄が弱いなどの、遺伝的体質が関連します。尿酸の高い方では、食事を減らし(腹八分目)、よく歩き、標準体重を守ることが大切です。
血液検査のなかに腫瘍マーカーと言うものがあります。実は、この腫瘍マーカーには何十種類もあるのですが、その一つ一つで陽性になる癌が違うのです。例えば、CEAだったら消化器系の癌、肺癌など、SCCだったら皮膚癌や肺癌、子宮頚癌など、CA19-9だったら膵臓癌、卵巣癌などと言うわけです。
だったら、腫瘍マーカーを全部、検査したらいいんじゃないですか?
ところが全部やったとしても、腫瘍マーカーを出さない癌もたくさんありますし、また腫瘍マーカーを出すことの多い癌であっても、その癌にかかっている方のうち、何割かの方では腫瘍マーカーが陰性です。つまり陰性だからといって癌にかかっていないとも言えません。また陽性の結果が出てても、全員に癌が見つかるわけでもないのです。
そんなことで、現時点では、腫瘍マーカー検査は癌の早期発見にあまり役立たないと言われます。
腫瘍マーカー検査は高価なこともあり、健康保険で行う場合、レントゲン検査などの結果、癌が強く疑われる場合のみしか、その測定は認められていません。結局、腫瘍マーカー検査は、癌にかかった方の治療の際、癌の再発を早目に発見する目的で測定されるもので、その際に限って健康保険が使えるのです。
それではどうしたら良いのですか?
癌の早期発見には、例えば肺がんなら胸部CT、胃がんには胃カメラ、大腸がんには大腸ファイバー検査、乳がんにはマンモグラフイー検査というように、個別に検査を受けて頂く必要があるのです。
動脈の壁に血液中の脂質(コレステロールなど)が貯まってきますと、動脈壁の弾力性が失われ硬くなり、また動脈が狭くなって血液の流れが滞る原因となります。こういった状態を動脈硬化といいます。
動脈硬化には、(1) 粥状(じゅくじょう)硬化(アテローム硬化)、(2)細動脈(さいどうみゃく)硬化などのタイプがあります。動脈の壁は内膜、中膜、外膜の三層からなっていますが、粥状硬化は、大動脈、脳の動脈、冠動脈(心臓の動脈)など比較的太い動脈に起こる動脈硬化で、動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪がたまって粥腫(じゅくしゅ)(アテローム)ができ、それが次第に厚くなって、そのため動脈の内腔が狭くなります。
そうこうしているうちに、ある日突然、粥腫が動脈の内腔に破れ、そこに血栓(血液の塊)がつくられると、動脈は完全に詰まってしまうことになります。 このような機序で心筋梗塞や脳血栓(脳梗塞)が起こるのです。
この粥腫のもとになる悪玉コレステロール(LDLコレステロール)は、動物性脂肪に多く含まれています。一方、善玉コレステロール(HDLコレステロール)は、動脈硬化を抑える作用があります。中性脂肪も動脈硬化を促すといわれ食べ過ぎやアルコールの摂取などで上昇します。
一方、細動脈硬化は、脳や腎臓のなかの細い動脈が硬化して血液の流れが滞るタイプの動脈硬化です。このタイプは高血圧が長く続くことによって引き起こされますが、この細動脈硬化も脳梗塞などの原因となります。
健康診断でLDLコレステロールが高いので動脈硬化の危険があると言われました。LDLコレステロールってなんですか?
コレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールとがあります。そのうちのLDLコレステロールが増えると、動脈硬化にかかる主な原因になることから、悪玉コレステロールと呼ばれるのです。そこで動脈硬化の予防には、このLDLコレステロールを下げることが大切なのです。
血液検査でHDLコレステロールが低いので動脈硬化になりやすいと言われました。HDLコレステロールってなんですか?
HDLコレステロールには動脈硬化のもとになるLDLコレステロールを回収し肝臓に運んで燃やしてしまうという働きがあります。そこで、血液中にHDLコレステロールが多いと動脈硬化の予防になりますので、善玉コレステロールと呼ばれるのです。
逆に低いと動脈硬化にかかりやすくなります。HDLコレステロールは軽い運動を続けると増えますが、運動不足、喫煙、肥満などで減少します。HDLコレステロールを増やすには食生活を見直し、食べすぎをやめて、腹八分目にして適正体重に保つ、そして定期的な運動習慣が大切です。
元々、コレステロールの高い方の約30%は遺伝性、家族性のものと言われています。中でも270mg/dlを越えている場合には、遺伝性、家族性の可能性が高いと言われます。肝臓でコレステロールを合成する酵素が多いので食事の内容とは関係なく、コレステロールが高くなってしまうのです。
それ以外に「健診で、これまで正常だったのにLDLコレステロール値が高いと言われた。脂っこいものばかりを食べたわけでもないのに、なぜ?」50歳前後の更年期を迎えた女性に、このような経験をする人が増えてきます。
女性では40代後半から50代になると、急にLDL(悪玉)コレステロール値や中性脂肪値が上昇してきます。そして、50代以降では約半数の方が「脂質異常症」(高脂血症)の診断基準にあてはまる数値になってしまいます。
これは、女性が更年期になり閉経に近づくと、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌が減少してくることと関係しています。エストロゲンはLDLコレステロールの分解と排泄を促し、HDL(善玉)コレステロールの合成を促すという大切な働きをしています。つまり血管の老化を防いで動脈硬化などの悪い方向に進むのを防いでくれていたのです。すなわちエストロゲン分泌の減少がLDLコレステロール上昇の原因だったという分けです。
つまり更年期を過ぎると、女性ホルモンの分泌が低下し、そのせいで食事とは関係なく、急速に血液中のコレステロールが上昇します。それに伴って心臓病などの動脈硬化による病気が増えてくるのです。
HbA1cが高いので糖尿病と言われました。血液検査の際に食事をしてきてしまいましたが、この食事のせいではないでしょうか?
糖尿病にかかっているかどうかを調べる際。血糖は測った時間によりさまざまな値となります。すなわち食事の影響を受け、食後に高くなり空腹時には低くなります。一方、血糖と違ってHbA1c(ヘモグロビンA1C)は、血液検査をした日から過去1ヶ月月間の血糖の状態を現し、血糖の高い状態が続くと高い値になりますが、直前の食事の影響は受けません。正常値は6.4%まで、6.5%以上なら糖尿病と考えて間違いありません。なお糖尿病の方では合併症を防ぐためHbA1cを7%以下に保つことが大切です。
脂肪肝と言われました?
脂肪肝とは肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態で、肝臓内の肝細胞の30%以上に脂肪が認められる状態を言います。
お酒を飲まない人の脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と言います。NAFLDには進行せず良性の経過をたどる単純性脂肪肝と肝硬変、肝癌へと進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎 (NASHナッシュ)とがあり、NASHは国内に約100〜200万人いると推定されています。
これまで脂肪肝は、ほとんど進行せず重篤な病態にはならないと考えられていました。しかしNASHでは慢性の肝障害が進行し、末期には肝硬変や肝癌へと進行することがあります。
肝癌の多くはB型やC型肝炎ウイルスに感染している患者さんから(約90%)ですが、このところ肝炎ウイルスに感染していない肝癌患者が増加しています。その原因としてNASH由来の肝癌が疑われています。
肝臓は沈黙の臓器とも言われ、脂肪肝にかかっても、初期には症状はほとんどありません。人間ドック受診者の20〜30%に脂肪肝が見つかるとの報告もあります。
メタボリックシンドロームと言われました
メタボリックシンドロームとは、「内臓脂肪症候群」とも呼ばれ、腸のまわり、または腹腔内にたまる「内臓脂肪の蓄積」によって、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病の重なりが起こっていることを示しています。そして、この状態は、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる動脈硬化を急速に進行させてしまうのです。つまり、動脈硬化の進行予防という観点から“すでに手を打たなければならない状態”として捉える必要があります。
メタボリックシンドロームになりやすい生活習慣としては、暴飲暴食、過剰な間食、過剰な糖分摂取、濃い味付け、緑黄色野菜の不足、運動不足などがあげられ、こういった生活習慣の改善が最も大切です。
なかでも肥満が重要で、体重の目安としてBMI:体重(kg)/身長(m)2がよく使われます。BMI 25〜30kg/m2の軽度の肥満では50%に脂肪肝が認められ、BMI 30kg/m2以上の高度肥満では75%に脂肪肝が認められるとの報告があります。体重減少はメタボリックシンドロームの病態改善に有効であることが証明されておりBMI25以上の場合10%の体重減少を図ります。
腎臓の機能が低下した状態を言います。腎臓の機能を示す検査値GFRとは糸球体が1分間にどれくらいの血液を濾過して尿を作れるかを示す値です。健康な人では腎臓の働き(GFR)は100mL/分/1.73u前後ですが、このGFRが健康な人の60%以下に低下する(GFRが60m?/分/1.73u未満)か、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を、CKD(慢性腎臓病)と言います。
年をとると腎機能は低下していきますから、高齢者になるほどCKDが多くなります。透析が必要な状態になってからでは手遅れですから、このような腎機能の悪化を早期に知るための目的で、血清クレアチニン値をもとにeGFRを計算し用いるのです。