片頭痛は、次のような特徴がある頭痛で、他のタイプとの鑑別点は、
(1)「頭痛が発作性であるか」、(2)「体動による増悪があるか」、(3)「頭痛時に吐き気を伴うのか」、(4)「光過敏・音過敏の症状を持っているか」である。
(1)日常生活に支障をきたすほどの激しい頭痛を発作性、周期的に繰り返す。
(2)頭痛が起こると悪心・嘔吐を伴い、光や音に過敏になったりする。
(3)心臓の鼓動(脈拍)にあわせたズキンズキン(ひどくなるとガンガン)とする拍動性
頭痛が数時間〜3日間持続する。頭痛が拍動性でない場合もある。
(4)多くは頭部の片側(約60%)で起きるが、両側(約40%)に痛みが出る場合もある。
(5)階段の昇り降りなど、日常的な運動や体動で症状が悪化する。
(6)思春期または若年成人期に初発する。それまで頭痛がなく、50歳以降に初発した頭痛 は、別の頭痛を考える。片頭痛が日常生活に及ぼす影響を見ると、「いつも寝込む」4%「ときどき寝込む」30%、「寝込まないが支障大」40%と、実に74%の方が日常生活に重大な影響を受けています。なお経験上、睡眠をとり、目覚めたら治るので、頭痛が起こったらあきらめて眠ってしまうと言う方もあります。
片頭痛は、若いうちに必ず発病し、遅くとも30歳までにあらわれることが多く、年をとってから初めて起こるといったことはありません。片頭痛は、そのほとんどが30歳までに発病しますが、10歳代に始めて出現することが最も多い(44.5%)のです、その次が20歳代(27.7%)、その次が10歳未満、(15.3%)、以上で87.5%です。つまり、50歳代や60歳代になって初めて片頭痛が起こるようなことはないので、そのような場合には別の病気を考える必要があります。
片頭痛の方の約75%に遺伝性があり、親兄弟に片頭痛の方が存在すれば、片頭痛になる可能性はかなり高くなります。たとえば母親に片頭痛があると、娘の70%、息子の約30%に片頭痛が出るとされ、父親に片頭痛がある場合には、その遺伝比率は母親の場合の半分程度になるといわれます。
片頭痛では、頭の半分が痛む方が多いのですが、必ずしも頭の半分が痛むだけとは限りません。「片頭痛」と書きますが、両側が痛む片頭痛の方も多くおられます。60%では、頭の半分(片側)に痛みが起きることが多いのですが、残りの40%の方では両側に出る場合もあります。さらに右側あるいは左側が痛むとか、両側が痛む、両側が痛むけど左側の痛みが強いなど、頭痛が起きるたびに痛む場所が変わる人もあります。
片頭痛とは頭の半分が痛む頭痛ではなく、日常的な動作で頭痛が悪化することが特徴で、日常生活に支障があるほどひどく痛む頭痛であることです。
片頭痛は小児あるいは思春期で最も多い頭痛の一つで、小中学生の4.8〜17.2%(成人の場合8.4%)が片頭痛だと報告されています。片頭痛の方の多くは、思春期すなわち10才前後から始まりますが、4〜5歳から始まる場合もあります。すなわち日本人の片頭痛の半数以上は20歳以前に発病し、3分の1は15歳以下と言われています。
世界の疫学調査によると、片頭痛の頻度は3〜7歳で1.2〜3.2%、7〜11歳で4〜11%、15歳で8〜23%です(2009年Neurol Clin)。学童の10人に1人は片頭痛の経験を持つという数値もあります(英国Migraine Action Association)。なお、子供の時、乗り物酔いしやすかった方が、その後、片頭痛にかかりやすいことが分かっています。
小児の片頭痛は、成人と比べて痛みの持続時間が短いほか、頭の両側に感じることが多く、頭痛以外の症状(顔面蒼白、嘔吐、腹部症状など)が目立つことも特徴です。朝になって急に頭痛が起こって学校を休まざるを得ないことも多いのですが、短時間で回復したりしますので、この病気に関する知識がない人からは、仮病やさぼりなどと誤解されることさえあります。
なお、現在、子供の片頭痛には片頭痛特効薬であるトリプタン系薬剤は使えません。子どもの片頭痛に対しては、アセトアミノフェンとイブプロフェンが有効かつ安全な薬剤とされています。また、片頭痛予防薬としては、ペリアクチン、デパケン、トリプタノールなどの薬剤が使われます。
片頭痛はズキンズキンと痛む拍動性の頭痛が特徴と言われますが、非拍動性の場合も50%にみられます。片頭痛の診断でポイントとなるのは、片頭痛は数日から数週間の間をおいて出現する(発作性)、日常生活に影響を及ぼす、悪心(吐き気)・嘔吐を伴う、発作時に光過敏、音過敏があるかどうか等の点です。
片頭痛の診断基準には片側性、拍動性という頭痛の特徴が挙げられていますが、いつも片側性の頭痛は30%前後の患者さんに見られるだけで、また、いつもズキンズキン(拍動性)する人の方が少ないともいわれています。すなわち両側性に痛くても、締め付けられるような痛みであっても、それが、日常生活が普通に送れないほどひどい頭痛であれば、片頭痛の可能性があります。
うつむき姿勢や肩こり、ストレスなどが誘因となって起こる頭痛は緊張型頭痛(筋収縮性頭痛)として知られていますが、普段から肩こりがある方では、自分の頭痛は緊張型頭痛(肩こりからの頭痛)と思い込んでおられる方がよくおられます。
しかし片頭痛の方の中には、普段から肩こりや頸部の痛みをもたれている方も多く(肩凝りを有する片頭痛患者は75%)、肩こりがひどいからと言って、その方の頭痛が緊張型頭痛とは限りません。
片頭痛の発作は肩こり感(片頭痛の前触れ)から始まることが多い(75%)ので、肩こりから起こった頭痛とよく間違えられたりします。
緊張型頭痛の特徴は、だらだらと毎日続くことですが、片頭痛は発作性、すなわち時々、起こる頭痛で3日以上続くことはありません、また、日常生活に影響を及ぼすほどひどく痛むのが特徴です。
片頭痛では朝、起きた時から頭が痛い、夜中に頭痛で目が覚めるなどと言う方も多く、寝不足、寝過ぎの時もよく起こります。女性では、女性ホルモンの変動に伴い、生理中、生理の前後などの時期に片頭痛が起こる人が多くいます。人混みの中から帰ると頭痛がしたり、初夏などの蒸し暑い環境でもよく起ったります。
また、仕事中などの緊張状態下ではなく、仕事が終わった後とか、日曜日などの緊張状態(ストレス)から解放されたときに起こる方がよくおられます。
片頭痛では頭痛の起こる数時間から1〜2日前、これから何となく頭痛が起こりそうな気がする「予兆」と呼ばれる症状が5人中1人(約20%)の割合でみられます。具体的には、情緒不安定になる、気分がすぐれない、あくびを繰り返すなどさまざまなものがあります。
それ以外に明確な前ぶれ(前兆)がある方も多く、そのような前兆のうち多いものは、視野が欠け(半盲)、その周りにギザギザした光が出る閃輝暗点(せんきあんてん)があります。これが4分〜60分間程度(多くは30分ぐらい)続いた後に、頭痛が出現し、半盲や閃輝暗点などの前兆は頭痛が始まる前に消失します。
片頭痛発作時には、痛みを調節する抑制系の障害が起こり、痛みが増幅されます。その事を感覚過敏(アロディニア)と言います。片頭痛が起こってから、痛いまま放置していると、このアロディニアが起こる方があります。皮膚では、熱い冷たい、機械的刺激に対する感受性が亢進します。その際に頭髪をとかすのも嫌がる人もいますし、手指のピリピリ感などが起こることもあります。
この感覚過敏の症状としては、頭髪・頭皮膚の過敏(50%)、額・顔の皮膚過敏(37%)、手指の過敏(28%)が証明されます。更に、光過敏(87%)、音過敏(83%)、嗅覚過敏(50%)もよく見られます。
なおアロディニアが起こってからでは、頭痛薬の効果がなくなりますので、片頭痛の方ではアロディニアが起こる前、すなわち、頭痛が起ったら我慢せずに、早めにお薬を服用される方が良いでしょう。
片頭痛もちの方には、子供の頃から「車酔い」や「船酔い」にかかる方が多いことが知られています。このような方が、思春期をすぎると、片頭痛発作を起こすようになることが少なくありません。
また片頭痛もちの方では、頭痛のない時でも、ギラギラ「めまい」感が起こることがあります。すなわち外界が異常に眩しく感じられたり、あるいは縞模様や格子縞の模様を見ると、グラグラッとする「めまい」を覚えたりすることがあるのです。
片頭痛の約1割の方では、平衡感覚を司る前庭系の異常を合併すると言われており、頭痛と「めまい」がほぼ同時に起きることもあれば、頭痛だけの時もあるし、あるいは「めまい」だけの時もあります。片頭痛に伴い神経伝達物質が過剰に分泌されますが、この神経ペプチドは片頭痛を起こすだけでなく、前庭と呼ばれる三半規管などの平衡感覚を司る器官にも過剰に作用するために「めまい」が起こると考えられています。
片頭痛の方に起こる「めまい」には、(1)頭痛の前兆として起こる「めまい」、(2)頭痛発作の最中に生じる「めまい」、そして(3)頭痛発作のない間欠期に生じる「めまい」があります。
それ以外に片頭痛の方では、血圧を安定させるのに働く自律神経が弱い方が多く、立ち眩みがよく起こる方があります。これは起立性血圧調節障害といって、立ち上がった時に血圧が下がって脳貧血を起こすからです。
なお、片頭痛のうち脳底型片頭痛という特殊なタイプでは、頭痛と回転性のめまいが起こりますが、この脳底型片頭痛の方は、副作用が起こることがあるので、片頭痛の特効薬であるトリプタン系薬剤は服用できません。
目の奥が痛む場合、緑内障の可能性もありますので、眼科で眼圧を測ってもらった方が良いでしょう。それ以外に副鼻腔炎(蓄膿症)で同じような痛みが起こることもあります。なお、ヒタイがズキッ、ズキッと痛み出したらヘルペス(帯状疱疹)の可能性もあります。ヘルペスなら痛みが起こりだして数日してから、発疹が出てきますので、ヘルペスにかかっていないかどうか、しばらく様子をみる必要があります。
片頭痛では、最初、目の奥が痛くなって、それから頭全体に頭痛が広がってゆく方がよくおられます。群発頭痛では、やはり目の奥の痛みから始まる方が多いのですが、群発頭痛では、一定の期間(1〜3か月の間)、毎日、1〜数回、同じような時間帯に、耐えられないような痛みが起こり、1〜3時間で自然に痛みが治まります。このようなエピソードから、片頭痛と群発頭痛を区別することは簡単ですが、もうひとつの特徴は、片頭痛では体動、すなわち体を動かすと頭痛がひどくなりますので、頭痛が起こっている間は、じっとしておられますが、群発頭痛では、あまりに痛みがひどく、じっとしておられず、動き回る方がほとんどです。
なお、緊張型頭痛の方でも目の奥の痛みを訴える方がよくおられます。 それを大後頭三叉神経症候群と呼び、後頭部に痛みがある場合に目の奥の痛みや、目の疲れ、まぶしさが起こることがあるのです。これは後頭部にある後頭神経への刺激が頭の中でつながっている三叉神経第1枝に伝搬(放散)して(関連痛)として、目の奥の痛みをはじめ、さまざまな目のあたりの症状を引き起こすことによります。
片頭痛は年齢を経ると軽くなることが多く、50歳を過ぎると、頭痛がずっと軽くなったり、まったく起こらなくなったりする方が多いようです。
片頭痛を持った高齢を迎えた方では頭痛の程度は軽くなることが多いのですが、その分、頭痛の頻度が増え、そして発作の持続時間が長くなったりする傾向があります。
なお、妊娠中は片頭痛が起こらなくなったり、軽くなったりすることが多いことが知られています。
雨の降りやすい季節や季節の変わり目に片頭痛が起こる方がよくおられます。片頭痛と気候には関係があるようで、片頭痛は季節の変わり目などの温度変化や低気圧などの気象の変化がきっかけになって起こることがあると考えられています。
片頭痛は暑さや強い光でも誘発されやすいため、気温が上昇し、太陽が照りつけるようになる初夏などの夏に向かっての季節は注意が必要です。片頭痛患者さんの調査によると、気温が上昇した後に湿度が高くなったとき、また、短時間で気圧が大きく低下したときに痛みを訴える方が多くなる傾向があり、低気圧の通過に伴う天気のくずれに対応して発症するものと考えられています。
天候については、約53%の方が時折(1/3以上)頭痛の原因として挙げており、約11%の方が主要(2/3)な原因として挙げているという報告があります。片頭痛の方34名に片頭痛が起きたときの気圧の変化の記録をとっていってもらった結果、1013pPa(標準気圧)より、6-10hPaの気圧低下がみられたときに頻繁に片頭痛が起こるという報告もあります。
女性ホルモンと片頭痛には深い関係があると考えられています。実際、生理が始まる数日前や生理中に片頭痛を訴える方は多く、この月経によって引き起こされた片頭痛を「月経時片頭痛」と呼んでいます。ピルには女性ホルモンが含まれているので、生理痛の症状緩和などの治療に使用されることもありますが、副作用として片頭痛の増悪が報告されています。
片頭痛もちの方で、最近、頭痛がひどくなったのでと、おいでになる方のうち最近、ピルを飲み始めたのでと言う方が結構おられます。すなわちピルの服用により片頭痛がひどくなったり、回数が増えたりする可能性もあって、その場合は片頭痛予防薬の服用などを使用するなどの対策が必要になることもあります。
前兆のある片頭痛をもつ方にエストロゲンを含む経口避妊薬は、血栓症のリスクが高まるため、原則として禁忌(使用禁止)です。前兆のない片頭痛のかたは禁忌ではなく、ほかの血栓症リスクに注意すれば服用可能です。
片頭痛の方では、妊娠すると頭痛の発作減ったり、無くなったりする方が多いのです。しかし、それでも妊娠中に片頭痛が起こる方もあり、その時は、どうしたらよいのか心配される方もよくおられます。トリプタン系薬剤に関しては、催奇形性や胎児毒性の報告はありませんが、薬剤の添付文章によれば、妊婦におけるトリプタンの安全性は確立していないと記載されています。なお偶発的な妊婦のトリプタン使用例の解析では胎児に対する重大な影響は確認できなかったと報告されています。すなわち現在のところ重篤な障害は知られていませんが、トリプタン系薬剤の妊婦における安全性は確立していない以上、妊娠中は片頭痛の特効薬であるトリプタン系薬剤は飲まない方が良いでしょう。
胎児への安全性を最優先に考えた場合、第一選択はアセトアミノフェンと考えられます。また消化管機能改善剤(制吐剤)を併用する場合、ドンペリドンは添付文書上妊娠中禁忌(大量投与のラットで催奇形性の報告あり)なので、妊娠中禁忌ではないメトクロプラミドを使います。すなわち妊娠の可能性(または希望)がある場合は、アセトアミノフェン(カロナール)+メトクロプラミド(プリンペラン)を使うのがよいでしょう。
薬剤添付文書ではすべてのトリプタン製剤は、投与時授乳を避けることとなっています。一方、薬剤の添付文書上、授乳中の投与に制限がない消炎鎮痛剤(痛み止め)としてはアセトアミノフェンがあります。従って第一選択薬はアセトアミノフェンと考えられます。
なお、どうしてもトリプタンを服用する必要がある場合、24時間授乳を中止するのが一般的ですが、スマトリプタンのみ2005年9月の添付文書改訂以降、12時間授乳を中止することと改訂されました。スマトリプタンについては投与後8時間を過ぎるとほとんど母乳中に検出されないという報告もありますし、脂溶性が低く乳汁への移行が少ない上に、生物的利用率も低いため、AAPのガイドラインで唯一授乳時の投与が容認されるトリプタン製剤としてリストアップされています。従って授乳中にトリプタン製剤を使う場合は、スマトリプタン(イミグラン)が最も無難な選択で、さらに投与後8時間授乳を避ければほぼ問題ないと考えられます。
片頭痛時に併用される消化管機能改善剤(制吐剤)の内、ドンペリドン(ナウゼリン)は薬剤添付文書上、授乳婦には大量ではない通常量の投与は認められています。それに対しメトクロプロミド((プリンペラン)は添付文書上、投与時は授乳を避けることとされています。
トリプタン系薬剤は現在、イミグラン(スマトリプタン)、マクサルト(リザトリプタン)、アマージ、ゾーミッグ(ゾルミトリプタン)、レルパックス(エレトリプタン)5種類が発売されています。イミグランには点鼻製剤、注射薬(自己注射用)があります。
トリプタンが著効するためには服薬のタイミングが重要です。我慢して頭痛がひどくなってから 服用すると十分な効果が得られません。頭痛が起ったら、なるべく早く服用するようにしましょう。
ひとつのトリプタン系薬剤の効果があまりない場合、他の種類に変えてみるのも、ひとつの方法です。
前兆時点で服用しても片頭痛の抑制効果はありません。必ず痛み始めてから服用してください。しかも頭痛が起ったら、なるべく早めに服用するのが大切です。
片頭痛が始まってから約20〜60分以降に、刺激に対して非常に敏感になる「アロディニア(感覚過敏)」が起こる場合があります。このアロディニアが起こってから服用しても、効果は十分に得ることができません。アロディニアが起こる前に薬を服用するのがポイントです。
片頭痛発作が起ると、消化管の蠕動運動が低下し吐き気や嘔吐が起こることが多いのですが、消化管の蠕動運動が低下すると、飲んだお薬の吸収も悪くなって、効きが悪くなり、十分な効果が得られません。そこで消化管機能改善剤(制吐剤)をいっしょに飲んだ方が良いでしょう。
トリプタンも他の鎮痛薬(痛み止め)と同様に服用回数が多すぎると、薬のせいで、かえって頭痛がひどくなる薬物乱用頭痛を引き起こします。服用するのは、1か月に10日以上にならないように注意が必要です。 服用回数が多くなるようなら片頭痛予防薬の併用が推奨されます。
トリプタンは血管を収縮させる作用があるので心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症のある方は病気が悪化する可能性があるため使用できません。また、家族性片麻痺性片頭痛、孤発性片麻痺性片頭痛、脳底型片頭痛あるいは眼筋麻痺性片頭痛の方も飲むことができません。
片頭痛の方では、普段から頭痛薬が手放せない方が多く、そのせいで飲む回数や量がどんどん増えてゆく方があります。しかし頭が痛いからといって毎日のように頭痛薬を飲んでいると、頭痛を治すための薬を飲み過ぎることによって、かえって頭痛をこじらせることになりかねません。
頭痛薬を飲みすぎると、脳が痛みに敏感になり、頭痛の回数が増え、薬も効きにくくなってくるという悪循環に陥ってしまうのです。
頭痛薬の飲み過ぎにより、かえって毎日頭痛が起こるようになった状態を「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」といいます。頭痛薬を月に10日以上飲んでいる場合には「薬物乱用頭痛)」に陥っている可能性があります。
頭痛薬を1カ月のうち、10日から15日以上服用する状態が3カ月以上続くと起こるとされています」、「薬物乱用頭痛」にならないために薬は月10日以上飲まないようにしましょう。
1か月に10日以上頭痛薬を服用すると、薬のせいで薬物乱用頭痛の状態となり、頭痛がどんどん悪くなってしまいます。そんな時は、片頭痛予防薬を併用した方が良いでしょう。一般に片頭痛予防薬はすぐに効果が出るわけではなく、しばらく根気よく服用されることによって薬効が発揮されてきます。
呉茱萸湯(ゴシュユトウ:漢方薬):丸山らの調査では、片頭痛に対して塩酸ロメリジン(ミグシス・ラナス)に比較して呉茱萸湯はより有効であったとしています。呉茱萸湯は片頭痛の予防に有効といわれ、慢性頭痛の診療ガイドラインでも推奨されています。
ミグシス(塩酸ロメリジン)は、わが国で開発された Ca拮抗薬で、有用性が証明されています。片頭痛の予防薬の第一選択薬のひとつで、10〜20mg/日を用います。
デパケン(バルプロム酸)は、抗てんかん薬としても使用されますが、片頭痛予防効果の良質なエビデンスがあります。欧米では片頭痛治療薬として約 20年の使用経験が蓄積されており、第一選択薬のひとつです。なお、バルプロム酸は妊娠中の患者さんの服用は禁忌となっています。
インデラル(プロプラノロール:β 遮断薬)は海外でも、わが国の慢性頭痛診療ガイドラインでも第一選択薬のひとつとして推奨されており、20mg〜60mg1日の用量が使用されます。
トリプタノール(アミトリプチリン)は抗うつ剤としても使用されますが、片頭痛の予防に有用です。低用量(5〜10mg/日、就寝前)から開始し、効果を確認しながら漸増する。10〜60mg1日が推奨されています。