めまい Q&A
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- 「めまい」はなぜ起こるのですか?
- 「めまい」の原因のうちには心配なものがあると聞きました。
- 「めまい」がして病院へ行ったら「メニエール病」だと言われました。
- 「めまい」がして病院へ行ったら、耳石の異常による「良性発作性頭位変換
めまい」だと言われました。
- 「めまい」がして病院でMRI検査を受けましたが、異常がないので「耳から
のめまい」だと言われました。
- 朝起きた時から「めまい」がします。
- 脳の血液の流れが悪いのがめまいの原因と言われました。
- 「めまい」が起こったあとの注意点を教えてください
- 首、肩のこりがめまいの原因だと言われました。
- ふらふらします。血圧の薬を飲んでいますが、最近、血圧が低めです。
- 「めまい」がしてからずいぶん経つのですが、めまい、ふらつきが治りません。
それぞれの質問の答えに参考資料を載せています。参考資料の各表題をクリックしていただくと資料をご覧頂けます。
1.「めまい」はなぜ起こるのですか?
回転性めまい(vertigo)は周囲が回って見える、あるいは右から左に動いて見える異常感覚のことです。その約60%は耳(内耳)の病気が原因ですが、それ以外に脳の病気でも起こることがあります。すなわち「回転性めまい」は内耳にある前庭(三半規管や耳石器など)からの平衡感覚に関する情報を脳に伝える前庭神経系に急激な異常を生じると起こるのです。すなわち「回転性のめまい」が起ったら、「耳の病気」か「脳の病気」か、どちらかが原因と考えて差支えありません。耳が原因で起こる「めまい」の主なものには良性発作性頭位変換めまい、メニエール病、前庭神経炎などがあります。脳の病気で起こる病気としては脳梗塞による場合があるので注意が必要です。
「浮動性めまい」の多くは脳の異常(特に脳の血流障害)が原因で起こり、頸椎の異常「首こり、肩こり」が原因で起こることもあります。「ときどきフーッとなる立ちくらみ様めまい」の多くは、起立性低血圧など血圧が下がった際や、不整脈などの心臓の異常が原因で起こります。
2.「めまい」の原因のうちには心配なものがあると聞きました。
脳は大丈夫か?―脳梗塞の前兆かも―
めまいの原因うち約60%は耳の病気で起こりますが、一方「めまい」は脳の病気、多くはありませんが脳梗塞によって起る場合があるので注意が必要です。
めまい(dizzinessもしくはvertigo)と診断された患者の1%〜3%に脳梗塞が見つかったとの報告がみられます。すなわち「めまい」の中には脳幹や小脳の脳梗塞の場合もあり、「めまい」なら安易に「メニエール病」とか「良性発作性頭位めまい」だろうと考えてしまうのは危険です。
それ以外に突発性難聴にも注意が必要です。高度の難聴が突然に生じ、同時にめまいを伴うことも多い病気です。聴力の回復のためには早期に治療を始めることが重要で、手遅れにならない前に耳鼻科専門医でみてもらう必要があります。
3.「めまい」がして病院へ行ったら「メニエール病」だと言われました。
かつて、「めまい」がして医療機関を受診すれば、たいていメニエール病だろうと言われた時代がありました。しかし実際にはメニエール病は「めまい」のする患者さんのうちの数パーセント程度と思われ、さほど頻度が高い病気ではありません。
なお「めまい」だけが起こった場合は、メニエール病ではありません。メニエール病では、「めまい」と同時に難聴、耳鳴り、耳が詰まる感じ(耳閉感)などの聴覚症状を伴います。ここで一番大切なことは必ず「聴覚症状を伴う」ことです。そして、その「めまい発作を反復すること」と定義され、メニエール病は以上のような聴覚症状を伴う「めまいをくり返す」エピソードがあって初めて診断できます。しかし、今もって、めまいで受診すると「メニエール病」との診断を受ける方が多いのですが、「めまい」を間違いなく診断することは、専門医であってもとても難しく、かかりつけの内科の先生に正確な診断を求めるのは無理があります。
4.「めまい」がして病院へ行ったら、耳石の異常による「良性発作性頭位変換めまい」だと言われました。
めまいのうち、耳が原因で起こるものが約60%、そのうち、一番多いものが良性発作性頭位変換めまい(BPPV)です。その症状は頭位変換(頭の位置を変えること)により回転性めまいが起こり、必ず10〜30秒で自然に治まります。そして、頭を動かさない限りめまいは起こりません。
しかし、頭位や体位の変化により「回転性のめまい」が誘発される病気は、そればかりではありません。悪性発作性頭位眩暈(中枢性頭位めまい)、すなわち小脳にできた脳腫瘍などで起こることもあります。それ以外に、頚部を捻転(頭位を変えた時)することにより、頸椎のなかを走る椎骨動脈が、頸椎にできた骨棘(骨のトゲ)で圧迫され、そのせいで、その先にある脳(脳幹部の前庭神経核)への血流が悪くなって起こる場合もあります。
良性発作性頭位変換めまいでは、起床や就寝時、棚の上の物を取る上向き、または洗髪のような下向き頭位、寝返りなどで誘発されることが多く、めまいの持続時間は数秒〜数10秒であり、長時間めまいが続くことはありません。また「めまい」には難聴や耳鳴などの聴覚症状を随伴しません。
この病気の原因は内耳にある半規管内の浮遊耳石またはクプラに付着した耳石やデブリ(ゴミのようなもの)によると推定されており、耳石の存在する半規管により、後半規管型、水平(外側)半規管型に分類されます。従来は後半規管内の耳石によるものが多いとされてきましたが、近年、水平(外側)半規管内の耳石に起因する概念が提唱され定着しつつあります。
5.「めまい」がして病院でMRI検査を受けましたが、異常がないので「耳からのめまい」だと言われました。
めまいの中で一番心配なものが、「脳からのめまい」、すなわち小脳や脳幹部の脳梗塞の場合です。脳梗塞によるめまいの場合、MRI検査で脳梗塞が必ず写るのかというと、かならずしもそうではなく、写らない場合もあるのです。すなわちMRI検査で異常がないからといって脳梗塞でないとは言えません。
小脳、特に小脳虫部や扁桃領域に限局した脳梗塞は、体幹失調(ふらつき)を主徴として四肢の協調運動障害や、他の小脳、脳幹症状を欠く、いわゆる偽性迷路症状(あたかも耳からのめまいを思わせる症状)を呈することがあります。そこで、しばしば前庭神経炎を始めとする末梢性の耳性めまいとの鑑別が困難な時も多く、特に急性期はMRIの拡散強調画像でも脳梗塞病変が捉えられないことがあります。そこで専門医による病歴の聴取と診察所見からの正確な診断が重要になります。
6.朝起きた時から「めまい」がします。
朝起床時から「めまい」がしてと、おいでになる患者さんはとても多いのですが、その原因としては (1)良性発作性頭位変換めまい (2)一過性脳虚血発作(脳の血液の流れが悪くなって)、もしくは脳梗塞の場合があります。
良性発作性頭位変換めまいが朝起床時に多いのは、寝ている時の頭の位置が関係していると言われています。朝起床時は、脳の血流が悪くなって、あるいは脳の血管が詰まる脳梗塞が多い時間帯です。良性発作性頭位変換めまいでは、めまいは何もしなくても10〜30秒以内になくなりますし、頭を動かさない限りはめまいが起こりません。めまいがそれ以上の時間続くとか、めまいがした後、起き上がって歩こうとしても「ふらついて」歩けないと言う場合は、脳の血液の流れが悪くなっている場合、あるいは脳梗塞の場合もありますので、すぐに医療機関を受診された方が良いでしょう。
脳梗塞は朝起床時に症状に気づくことが多い
朝起床時というのは脳梗塞が一番起こりやすい時間帯です。脳梗塞の中でも脳の細かい血管が狭くなり、詰まって起こる脳梗塞(小梗塞)や動脈硬化で狭くなった脳の太い血管に血栓ができ、血管が詰まって起こる脳梗塞(中梗塞)は睡眠中に発症し、朝起きたときに症状に気づいたりすることもしばしばです。したがって朝起床時に起こった「めまい」も脳梗塞による場合あるいは脳梗塞の前ぶれの場合があり注意が必要です。
7.脳の血液の流れが悪いのがめまいの原因と言われました。
脳の血液の流れが悪くなると、「ふらふら」します。こう言った症状を「浮動性めまい」と言います。血液の流れがひどく悪くなると「回転性めまい」が起こることもあります。いずれも年配の方に多い症状ですが、その原因は動脈硬化で脳の動脈が狭くなって起こることが多いようです。また、こういった症状は脳梗塞の前触れである場合もありますので注意が必要です。治療としては、脳の血液の流れを良くするお薬(脳血流改善剤)を処方したり、点滴したりします。
8.「めまい」が起こったあとの注意点を教えてください。
脳が原因で起こった「めまい」の場合ではもちろんですが、耳からの「めまい」を起こされた方の、その後の経過をみた研究によると、しばらくして脳梗塞にかかる方が多いことが分かりました。そこで耳からのめまい(耳性めまい)の原因にも、動脈硬化がなんらかの関連を持っているのではないかと疑われています。したがって耳からのめまいの方も、「めまいが」治まったあとも、治ったからと安心されずに、特に高血圧や高脂血症、糖尿病など動脈硬化の危険因子を持っている方では、そのコントロールに努めておかれる必要があります。
9.「首、肩のこり」がめまいの原因だと言われました。
首からくるめまい
首の筋肉には、体のバランスを保つうえで大切な平衡感覚に関する情報を調べて、それを脳へ伝えるという機能が備わっています。「肩こり」、「首こり」のひどい方では、首の回りの筋肉の緊張が強くなっているせいで、異常な情報が脳に伝わることになります。そのせいで「めまい」や「フラフラ感」が起こることがあります。
首の筋肉は肩や頭とつながっていますから、首の筋肉が緊張しているということは、肩や頭の筋肉も緊張していることになります。肩の筋肉の緊張は「肩こり」、頭の筋肉の緊張は「頭痛」「頭が重い」という症状になって現れます。このタイプの頭痛を緊張型頭痛(筋収縮性頭痛)と言い、頭がしめつけられるように痛むのが特徴です。この緊張型頭痛に伴うめまい感はとても多いようで、フラッとする、あるいはフラフラするようなめまい感が起こります。
10.ふらふらします。血圧の薬を飲んでいますが、最近、血圧が低めです。
血圧が下がりすぎて起こるめまい
血圧が急に下がった時に「めまい」が起こります。血圧が下ると、そのせいで脳に必要な血液が届かなくなるからです。脳循環障害にもっとも鋭敏に反応するのが脳にある前庭器官(脳幹部にある前庭神経核)であり、そのため血圧が下がりすぎると、めまいが起こるのです。
血圧の薬の効き過ぎで、血圧が下がってふらついていることもある
高血圧症で降圧薬(血圧の薬)を服用中の患者さんが「最近どうもフラフラする」、「めまい」がするといって来院された場合、血圧の薬が効きすぎて血圧が下がりすぎている場合もあります。血圧が下がり過ぎると、フラフラしたり、「立ちくらみ」もよく起こります。
一般に血圧は寒い冬に高くなり、暑い夏には下がることが多いのです。そこで同じ量のお薬を飲んでおられても、季節によっては、あるいは体の具合によっては、血圧が高くなったり、逆に低くなったりすることもあります。そこで、高くなったら、血圧の薬を増やしたり、低くなったら減らしたりして調節する必要があることもあるのです。血圧の薬を飲んでいるから大丈夫だと、血圧のチェックを怠る方もありますが、知らないうちに上がっている場合も、逆に下がり過ぎていることもないとは言えません。時々、血圧を測って、丁度良いところにあるかどうかをチェックすることが大切です。
11.「めまい」がしてからずいぶん経つのですが、めまい、ふらつきが治りません。
「めまい」がしてからいっこうに治らない「慢性めまい」で悩んでいる方が多いのですが、その原因として最近、「持続性知覚性姿勢誘発めまい」という疾患概念が報告され、その病態と治療法の解明が期待されています。
参考資料一覧
- 1)平衡感覚の経路
- 内耳は、聴覚系の受容器である蝸牛(かぎゅう)と平衡感覚の受容器(センサー)である耳石器(じせきき)と半規管からなっており、このうち平衡感覚の受容器は、前庭迷路(ぜんていめいろ)と総称される。耳石器は卵形(らんけいのう)と球形(きゅうけいのう)からなる。半規管は頭部を回転した場合に生じる回転加速度(角加速度)のセンサーであり、耳石器は、頭部の傾きや乗り物やエレベーターに乗った場合に生じる直線加速度のセンサーである。前庭神経は、内耳前庭迷路からの平衡感覚に関する情報を大脳平衡感覚領野へ伝えるが、そこに至るまでの間に、脳幹部にある前庭神経核を経由する。以上の耳から大脳に至るまでの平衡感覚を伝える経路を前庭神経系という。
- 2)日本神経治療学会 標準的治療:めまい 神経治療 Vol.28 No.2(2011)
- https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/memai.pdf
-
- 「めまい」は回転性眩暈(vertigo)に伴う異常感覚のことで、患者は静かに座っているにもかかわらず周囲が回って見える、あるいは右から左に動いて見えると体験を語るように錯視体験の一つである。これは三半規管や耳石器や前庭神経の急性障害によって大きな前庭眼振が生じているために感じる錯覚である。
- 「ふらつき」は、体が左右前後に揺れて感じる視覚運動体験の一つである。非回転性めまい(dizziness)という。脳神経系や筋骨格系の異常でも生じるが、三半規管の障害でも生じる。左右のバランスは前庭脊髄反射によっても保たれている。そのバランス機能が維持出来なくなるとふらつきが生じる「めまい」と「ふらつき」は、めまい疾患の急性期には一緒に生じるが、軽快するにつれ、「めまい」感は消え、「ふらつき」のみが残り寛解期にはそれも消える。「めまい」と「ふらつき」は、めまい疾患の急性期には一緒に生じるが、軽快するにつれ、「めまい」感は消え、「ふらつき」のみが残り寛解期にはそれも消える。
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- 3)めまい専門医による「めまい」診断に関する意見
- ほとんどの医師が、「めまい」をみれば昔はメニエール病、今は良性発作性頭位めまい症と診断しています。しかし実際にはメニエール病、良性発作性頭位変換めまい、前庭神経炎など教科書に載っているようなめまいの原因は非常にまれです。それらには分類されない疾患が殆どだと思います。
- 4)プライマリーケア医のためのめまい診療の進め方 中山 杜人 新興医学出版社
- 中高年者がめまいを訴えた場合、くれぐれも簡単に「メニエール病か、良性発作性頭位めまいでしょう。心配ないですよ」などと言わないようにしたいものである。脳の病気のなかでも、めまいの原因のうち多いものが一過性脳虚血発作である。そして少なくない例で脳梗塞の場合がある。
- 5)国立循環器病研究センタ― 循環器病情報サービス [30]めまいと循環器病
- http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/general/pamph30.html
- 当院におけるめまい患者の内訳は脳梗塞 12% 耳鼻科疾患 81% 仮面うつ病 5% 首の筋肉の緊張異常 2%、このうち脳梗塞の大半は、入院から退院時まで症状は「めまい」だけで、他の脳の症状は現れませんでした。このように、「めまい」だけのように思えても、実は脳梗塞のある場合があるのです。脳梗塞が非常に小さくて、「めまい」の症状しか出ないので見逃されているケースも少なくありません。
- 6)メディカジャパン付属研究所の調査
- 同研究所外来を訪れた18ヶ月間の464例のめまい患者のうち、良性発作性頭位めまい症 50% 緊張型頭痛に伴うめまい 16% 脳血管障害 5.2%(20人に 1人) 前庭神経炎 4.8% メニエール病 2.4%であった。
- 救急外来を受診しためまいの方、321例のうち脳梗塞によるものは6例、1.9%であった(埼玉医大 伊藤)。
- 7)<シンポジウム 25―3>めまいの臨床:最近の進歩 脳幹・小脳の血管障害によるめまい(臨床神経 2011;51:1092-1095)
- https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051111092.pdf
- めまいが症状の前景に立つ脳血管障害の病変部位は、ほとんどの場合脳幹または小脳である。小脳の血管障害の場合には麻痺や感覚障害はきたさず、あたかも末梢前庭障害のような単独めまいを生じることがある。脳幹の血管障害により生じためまいの場合には、通常明らかなめまい以外の神経症候を伴う。一方、小脳の場合には明らかなめまい以外の神経症候を伴わない。
- 三半規管や耳石器からの前庭感覚情報は、脳幹に存在する前庭神経核に入力し、視覚や深部感覚などの他の感覚情報と共に身体の平衡維持に役立てられている。小脳は前庭神経核を主として抑制的に制御して、平衡維持機構の調整をおこなっている。脳幹や小脳の血管障害では、こうした中枢前庭機構の破綻によりめまいが生じる。脳幹の血管障害により生じためまいの場合には、通常、明らかなめまい以外の神経症候もともなう。一方、小脳、それもとくに後下小脳動脈領域に生じた血管障害の場合には、明らかなめまい以外の神経症候をともなわず、しかも末梢前庭障害類似の眼振を呈することがある。
- 8)めまい外来 額田記念病院 中山杜人
- http://nukada.info/memai/memai1.html
- 「めまいですか?良性発作性頭位めまいかメニエール病でしょう。原因は内耳ですから心配ありません。お薬で様子をみましょう」でよいのでしょうか?
-
- --危険なめまい、脳や首からのめまいを考えたことはありませんか?--
めまいは内耳に起因するとは限りません!
- 中高年の人のめまいを簡単に「内耳性」と思い込まないこと。脳幹の前庭神経核、小脳からの「脳が原因のめまい」でも同じような回転性めまいが生じます。一見たいしたことのないようなめまいの中に危ないめまい、脳からのめまい(中枢性めまい)が潜んでいることがあります。内科では高齢の方のめまいが多く、東邦大耳鼻科の故小田恂教授は高齢者のめまいは中枢性が多く、脳梗塞と椎骨脳底動脈循環不全が多いと報告しています。
- 9)めまいのみの訴えで入院した小脳梗塞症例の検討 日耳鼻113:593−601、2010
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/113/7/113_7_593/_pd
- めまいを訴えて病院を受診する症例のうち、随伴する中枢神経症状がなく、訴えがめまいと前庭症状のみである場合には、一般的に末梢性めまいと考えられることが多い。しかしながら、小脳梗塞はめまい以外の症状を呈さず、末梢性めまいと鑑別が困難な場合がある。
- 10)見逃しリスク高い小脳梗塞の「教訓」【研修最前線】 第4週「総合回診」自治医科大学附属さいたま医療センター 2016年
- 小脳梗塞診断で注意すべきポイント
- 小脳梗塞や脳幹梗塞は頭部MRIでも偽陰性が多いという点です。発症後24時間以内のMRIの偽陰性率は5.8%、特に小脳などの後方循環系では31%とかなり高頻度であるとされています。発症後早期のMRIが正常であっても、脳幹梗塞や小脳梗塞は否定できないと考え、再度、時間をおいて検査してみることが重要になります。
- 2004年4月から2000年3月までの5年間に末梢性めまいが疑われて当科に入院した症例は309例であった。その中で、中枢性めまいは5例(1.6%)あり、そのうち小脳梗塞は4例(1.3%)であった。これらの4例はいずれも後下小脳動脈(PICA)の梗塞であった。
- 11)めまいを前駆症状とした小脳梗塞の2症例 耳鼻臨床 補52;25~33,1991
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirinsuppl1986/1991/Supplement52/1991_25/_pdf
- めまいを初発症状として小脳梗塞に進行した2症例を経験した。一見内耳障害としか考えられないようなめまいである場合、これが椎骨脳底動系の循環障害に起因していることを病初期にいかに早く診断するかが重要である。
- めまいがしばしば脳血管障害、脳腫瘍、変性疾患などの重大な中枢疾患の初発症状であることは古くからよく知られており、とりわけ脳血管障害とめまいは関連が深い。めまいを前駆症状とし、その後に明らかな脳梗塞を起こす例 があることから推定して、椎骨脳底動脈系の循環障害のなかには、ほとんど他の脳神経症状を伴わずにめまいだけを起こすものが存在することがわかる、一見内耳障害としか考えられないようなめまいである場合、これが椎骨脳底動脈系の循環障害に起因していることを、病初期にいかに早く診断するかが重要である。脳梗塞の前兆としてのめまいは、内耳障害によるめまいと鑑別困難なものがある。
- 12)Stroke Among Patient With Dizziness,Vertigo,and Imbalance in the Emergency Department ~ A Population-Based Study
Kevin A et.al:Stroke.2006;37:2484-2487
- めまい症状を訴えて来院した患者の総数は1666名。このうち、脳卒中/一過性脳虚血発作(Stroke/TIA)と診断された症例は53症例であり、全体の3.2%であった。
- 13)139Cerebellar infarction presenting isolated vertigo(H.Lee,MD et.al:Neurology.2006;67:1178-1183)
- MRIにおいて小脳の梗塞のみと診断された患者240症例において検討を実施。実際の原因血管とその症状の間の関連性について検討したStudy.特に前庭神経炎様のvertigoのみで来院した患者に焦点をおいて検討を実施。小脳限局性の脳梗塞症例のうち前庭神経炎様の症状のみで発症した患者は240症例中25症例の10.4%であった。
- 14)メニエール病とは?京都大学 耳鼻咽喉科 めまい外来ホームページより
- https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~ent/AboutUs/Topics/Meniere.html
- メニエール病は (1)回転性めまい(2)難聴(3)耳鳴りが連動して起こるもので、一回のめまい発作が約30分から6時間程度続きます。そして、このような「めまい発作」を不定期に繰り返します。30歳から60歳に多く、難聴は内耳性で特に低音部に障害があり、めまいに連動して変動します。
- 15)メニエール病の症状(日本めまい平衡医学会)
- http://www.memai.jp/shindan/02MenieresDisease.html
-
- (1)発作性の回転性(時に浮動性)めまいを反覆する。
- メニエール病のめまいは典型的な例では回転性である。めまいの持続は10数分〜数時間(発作性)である。短時間(数秒〜数分)のめまいのみではメニエール病は否定的である。典型的なめまい発作では発作中就床を要するほどであり、頭を動かすとめまい・悪心、嘔吐が誘発され、トイレにも這ってゆく程である。
- (2)めまい発作に伴って変動する蝸牛症状(耳鳴・難聴)がある。
- めまい発作に伴い耳鳴・難聴が変動するのがメニエール病である。
- 16)耳鼻咽喉科、頭頚部外科 つくば難聴、めまいセンター 2.めまい・ふらつきの原因は何が多いのでしょうか
- https://keiyu.or.jp/ent/top/sickness/dizzy/
- 繰り返すめまいのために病院やクリニックを受診した時に、「メニエール病」と言われたことがありませんか。めまいの病気としてメニエール病はよく知られており、家庭医学書でも治療が難しい慢性のめまいの代表的な病気として紹介されていることも多いようですが、しかし実際にはそんなに多くありません。
- めまい患者さんの統計では、内耳が原因と考えられる患者さんが約6割、脳の血液循環不良が原因と考えられる患者さんが約3割と報告されています。耳鼻咽喉科外来では内耳が原因と考えられるめまいの患者さんが多いのですが、メニエール病はこの中でも10人に1人(約10%)くらいしかいません。内耳が原因でめまいをおこす病気の中で、非常に頻度が高いのは「良性発作性頭位めまい症」(略して頭位めまい症)です。耳鼻咽喉科でみるめまい患者さんの約半数はこの頭位めまい症と考えられます。
- 17)めまい外来 額田記念病院)
- http://nukada.info/memai/memai1.html
- よく知られているメニエール病は、内耳におけるいわゆる水ぶくれ(内耳水腫)の病態です。しかし一般内科ではわずか0.6%程度に過ぎませんし、耳鼻咽喉科のめまい外来でも5〜10%と決して多くはありません。
- 18)メニエール病の頻度
- メニエール病の疫学的調査において、スウェーデンでは1年間の初診数が10万人あたり45名、日本では厚生省特定疾患研究班調査にて有病率は人口10万人対16〜17人(病院のみ)である。
- メニエール病は内科めまい外来を訪れた3021例中18例(0.6%)に過ぎなかった。特に60歳以上の高齢者のめまいでは、メニエール病はほとんど考えなくてよい(中山:2005)。
- 脳血管障害によるめまいは20人に1人(5%)(Herr:1989、Hain:1995、Drachman:1972)。メニエール病は2.4%(小宮山:2005)
- 19)良性発作性頭位めまい症の臨床的検討 白戸耳鼻咽喉科 めまいクリニック 白戸 勝
- http://www.hakodate-med.org/dounan/journal/001/001-5.pdf
- 新患数4,546例の良性発作性頭位変換めまい(BPPV)症例は病歴から診断した疑い例を含めると336例であった。この数値から考えると、めまい疾患の約10%がBPPVということになる。武田らは専門病院のめまい外来では全めまい患者の約10%であるという。発症率についてミネソタの調査では1年間に10万人あたり64人の発症、日本での調査で10万人あたり11〜17人の発症率が示されている。
- 20)脳梗塞の診断にMRIは役に立たない。
- http://square.umin.ac.jp/~massie-tmd/10okuen.html
- 急性脳梗塞に対する拡散強調画像の感度は、発症3時間以内は73%。つまり3割近くは偽陰性。12時間以内に時間を広げても、感度は81%にしか上昇しない。しかも、この数字は天幕の上と下を合わせてであり、小脳や脳幹部の梗塞は、これよりさらに感度が落ちる。つまり、たとえMRI拡散強調画像で陽性所見を捉えられなくても、”出血がない”という所見と臨床症状に基づいて脳虚血の診断を下すことには変わりがない。
- 21)見逃しリスク高い小脳梗塞の「教訓」【研修最前線】 自治医科大学附属さいたま医療センター「総合回診」Vol.4_3
- 小脳梗塞や脳幹梗塞は頭部 MRIでも偽陰性が多い。発症後24時間以内のMRIの偽陰性率は5.8%、特に小脳などの後方循環系では31%とかなり高頻度である。発症後早期のMRIが正常であっても、脳幹梗塞や小脳梗塞は否定できない。
- 22)脳卒中の診断におけるMRIのエビデンス 池田正行 EBMジャーナル 2008;9:96-97.
- https://square.umin.ac.jp/~massie-tmd/mrihuyou.html
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- MRIは脳卒中の診断に役立たない
- MRIが脳卒中の診断に必須であるとの幻想の背景には、拡散強調画像に対する誤解がある。急性期脳梗塞に対する拡散強調画像の感度は確かにX線CTよりも優れているが、それでも偽陰性率は発症3時間以内の場合26%、12時間以内でも19%である。しかも、この率は天幕上、天幕下の脳梗塞を合わせた数字だから、脳幹・小脳梗塞に対する拡散強調画像の偽陰性率は、さらに高くなる。
- 23)Dr.増井の神経救急セミナー【第2版】 日本医事新報社 Part 1 画像に頼らない、明日から使えるめまい診察伝授 めまい診療が難しい理由は?
- https://www.jmedj.co.jp/files/item/books%20PDF/978-4-7849-6243-3.pdf
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- 頭部MRI正常なら大丈夫?
- MRIでの脳梗塞の見逃しについてOppenheimらは、脳梗塞は前方循環(2%)より後方循環(19%)で多いと報告しています。前方循環というのは内頸動脈から分岐する中大脳動脈領域に代表される脳循環です。一方、後方循環は中枢性めまいをきたす椎骨脳底動脈領域の小脳梗塞や脳幹部梗塞です。
- 見逃しが前方循環(2%)より後方循環(19%)で多いのは、後方循環では梗塞から画像所見出現まで大幅なタイムラグがあり、急性期では軽微か偽陰性となるためです。このタイムラグは前方循環ではDWIで12時間もすれば感度90%以上ですが、後方循環では48時間以上経過しても90%には届きません。前方・後方循環を合わせた脳梗塞における頭部MRIの感度は3時間未満で73%、3〜12時間未満で81%、12時間以上で92%とされていますが、中枢性めまい(後方循環では)発症6〜48時間以内の頭部MRIの検出感度は10mm以上の比較的大きい梗塞でも92%、10mm未満の小梗塞なら47%とされます。
- 初回受診時に頭部MRIを実施してDWIで白く光れば小脳梗塞と診断できますが、小さい小脳梗塞なら2日経っても半分は所見が出ないため、DWIで異常所見がなくても、絶対に中枢性の除外ができるわけではないことを再認識して下さい。このようにめまいでは、CTだけでなくMRI検査をしても脳卒中の除外ができないことが診療を難しくしているのです。
- 24)初回MRIで偽陰性だった脳幹・小脳梗塞症例の検討 日耳鼻119:1290―1299,2016
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/119/10/119_1290/_pdf
- 脳梗塞の診断としてはMRIの拡散強調像(DWI)などが有用だが、発症24時間以内(特に発症早期3〜6時間以内)の梗塞では症状が明らかであるにもかかわらずDWIで画像所見に異常を認めない偽陰性例がある。急性期脳梗塞全体のDWI偽陰性率は5.8〜17%と報告されており、特に椎骨動脈から分岐する後方循環系に多く、そして発症から早期に検査されるほどDWI偽陰性率が高くなる。
- 25)めまいのみの訴えで入院した小脳梗塞症例の検討 日耳鼻113: 593―601,2010
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/113/7/113_7_593/_pdf
- 小脳梗塞はめまい以外の症状を呈さず、末梢性めまいと鑑別が困難な場合がある。MRI拡散強調画 像(DWI)を用いればその感度は80〜95%に達する。DWIは発症2時間以降の梗塞巣を描出すると報告されており、早期から梗塞の診断に有用である。ただし、発症24時間以内の急性期脳梗塞例においてDWI 偽陰性例は11.2%、その内73.7%は発症6時間以内との報告もあり、発症6時間以内には MRI(DWI)でも約8%に偽陰性があることは認識しておくべきである。
- 26)日本老友新聞 医療と健康 なんでも健康相談|高谷 典秀 医師 起床時にめまい症状が1週間…
- http://www.ro-yu.com/medical/kenkosoudan/544.html
-
- 中枢性と回転性の2症状 怖い脳出血・脳梗塞
- めまいは、平衡感覚を司る器官にまつわる様々な病気が原因となって起こります。そのうち、怖いものでは小脳に出血や脳梗塞などがあり、めまいのほか吐き気や頭痛を催すことがあります。その場合には、すぐにでもCTやMRIによる検査が必要です。フラフラするようなめまいは中枢性のもので、脳出血や脳梗塞などを起こしている危険があります。
- 27)国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス [103]脳梗塞が起こったら 症状の起こり方は?
- http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph103.html
- 脳卒中の症状は、突然現れることが多く、たいていは起こった時間がはっきりしています。昼間から夕方の活動時に急におかしくなる場合、夜中にトイレに起きた時や、朝目覚めた時に異常に気づく場合、起床後しばらくして異常が起こる場合など様々です。
- 28)脳血管障害の発症時刻に関する検討 脳卒中19: 132-137,1997 福田倫也 神田直 北井則夫 坂井文彦/
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/19/2/19_2_132/_pdf/-char/ja
- アテローム血栓性梗塞とラクナ梗塞は夜間睡眠中及び起床後間もなくの発症が多く、更に16〜17時台にもピークが認められた。夜間睡眠中に発症したと推定される例がきわめて多かった。
- 夜間に脳血栓症の発症が多い理由として、この時間帯の血圧下降、血液粘度の上昇、血栓形成を促進する血液凝固学的因子の変化などが挙げられているまた午前に発症の多い理由として、血管トーヌスの日内変化、脳血管CO2反応性の低下などとの関連も論議されている。
- 29)脳卒中とめまい 耳鼻31:1300〜1305,1985.
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibi1954/31/6/31_1300/_pdf
- 一般に回転性めまいは前庭器管、前庭神経、小脳および前庭神経核、前庭小脳路、前庭神経核からの上行路など主にテント下組織の障害で出現することから、脳幹部や小脳の血管障害、すなわち、これらの領域を灌流する椎骨脳底動脈系の脳卒中に当然多い。
- dizzinessなど非回転性めまいはテント下組織の循環障害のほかに、大脳半球の全般的な脳血流低下によって起こることが多く、したがつて部位特異性は回転性めまいほどではなく、むしろ頸動脈系の脳卒中で少なからずみられる。
- 大脳病変とめまい:テント上の脳卒中にみられるdizzinessは脳血流の全般的な低下によるであろうし小脳・脳幹病変とめまい、椎骨脳底動脈系の循環障害に伴うめまいについては前下小脳動脈あるいは上小脳動脈領域の梗塞では耳鳴り、難聴を伴うこともあるが、一般にはvertigoのみで内耳疾患のそれとはやや異なる従来局所症状を伴わない一過性のvertigoのみはTIAから除外されていたが、新しい診断基準にはVertigoのみのTIAもありうることをつけ加えられた。Vertigoのみを繰り返したのち脳底動脈血栓症を発症した症例もある。
- 30)めまい外来 額田記念病院
- http://nukada.info/memai/memai1.html
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- 脳の血液の流れが悪いため
- 椎骨脳底動脈の循環障害を基盤に、原因となる病巣は前庭神経核あるいは小脳虫部の一部と小脳下虫(結節、片葉ともいいます)なので「中枢性」の範疇に入ります。椎骨動脈は頸椎の中を上行していくという特徴があるため、首を曲げて下を向いたり、洗濯物を干すときなどに上を向いたりした場合、血流の変化を来しやすいのです。頸部筋群の緊張(首すじ、肩の凝り)があれば、椎骨動脈起始部の交感神経叢あるいは椎骨動脈周囲の交感神経が刺激され、頸部の過進展、過屈曲、頭位変換などの際、椎骨脳底動脈領域の血行不全を起こし、この種のめまいを生じやすいです。一般内科では3のタイプが最も多いと筆者は考えています。田淵クリニック院長も耳鼻咽喉科の第一線においてこの種のめまいが最多であるとしています。
- 31)シリーズ教育講座「難治性めまいへのアプローチ」 7.椎骨脳底動脈循環不全 山中 敏彰Equilibrium Res Vol.7 3(3)117~126、3014
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/73/3/73_117/_pdf
- 椎骨脳底動脈の血管障害により生じる病態は椎骨脳底動脈循環不全(Vertebrobasilar Insuffi-ciency:VBI)として一般臨床医によく知られている。
- VBIの多くはめまいをプライマリーサインとすることから、耳鼻咽喉科医が携わるケースも少なくなく、とくに発症因子となる高血圧、脂質異常、糖尿病を合併する高齢者に対しては、常にVBIを念頭に置いて診療に携わる必要がある。VBIは、椎骨脳底動脈系の器質的あるいは機能的な異常により、同支配領域に血流障害さらには虚血が生じる病態を表す総称である症候論的には一過性脳虚血発作(TransientIschemicattack:TIA)と合致するところが多いので、VBIの大部分を椎骨脳底動脈系のTIAとみなすことができる。
- 32)酒井病院 神経内科通信 2013年12月号 「めまい雑感」
- http://sakai24.org/publics/index/38/detail=1/b_id=39/r_id=85/
- 私の研究テーマの一つに「椎骨脳底動脈循環不全」というものがあります。脳に血流を供給する血管では左右の頸動脈が有名ですが、他にも左右の椎骨動脈、それらが合流した脳底動脈という重要な血管があります。これらの動脈に何らかの問題があって、脳血流が部分的に低下してめまいを引き起こすのが、この椎骨脳底動脈循環不全なのです。医者の間でもあまり知られておらず、耳鼻いんこう科や脳神経外科、神経内科などにかかっても異常なしとされ、途方にくれた方が当院を受診し、この診断のもとに治療を行い、症状の改善が得られたケースを私は数多く経験しています。
- 原因として重要なものが2つあり、血管の老化現象である動脈硬化による血流低下と頸椎(首の骨)の並びの異状による血管の圧迫です。お若い方で原因不明のめまいを持たれている方には頸椎のレントゲンをチェックする必要があるでしょう。当外来では積極的に頸椎、頸部の動脈を調べています。
- 33)脳循環不全によるめまい 久保 武
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser1971/50/4/50_4_339/_pdf
- めまいには多岐にわたる訴えが含まれ、脳虚血の重要な初期症状とされている。めまいをきたす疾患は大別して、末梢(内耳)障害と中枢障害とに分類される。椎骨脳底動脈循環不全症(vertebro-basilarinsufficiency:VBI)は、多種の疾患により惹起される病態を言い、中枢性めまいの中で最も多い。
- しばしば椎骨脳底動脈領域のTIA(一過性脳虚血発作)と同義語として用いられるが、TIAに比べ持続時間の長いめまいも包括されるため広い適応を持つ病名である。我々の統計では、めまい全体の約15%、中枢性めまいの60%をしめる。
- VBI(椎骨脳底動脈血行不全)は多種の原因からなる症候名、症状を原因別に分類すると器質的障害によるもの(椎骨脳底動脈系の動脈硬化、塞栓、動脈炎、頸椎での椎骨動脈の圧迫など機能性変化によるもの(低血圧、起立性失調症、心疾患などによる一過性血圧下降、血液疾患、代謝異常など)とに分類できる。
- 小脳の血管障害、小脳出血および梗塞では、急性めまい、嘔吐、嘔気、頭痛、構音章害、歩行障害などで発症し、病態が進展すれば意識障害、呼吸不全をきたし、時として致死的な結果を招くことが知られている。特に、めまい、強い嘔吐、頭痛が三徴候と言われており、メニエール病、前庭神経炎などの急性めまいをきたす疾患との鑑別が重要となる。
- 34)国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス [30]めまいと循環器病
- http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/general/pamph30.html
- 仮にMRI精査上明らかな脳梗塞が指摘されない場合においても、risk factorを有するめまい患者の場合は経過followが必要である旨を説明する必要がある。
- 耳性めまいは怖い病気ではないが、このめまいが起きたら「脳卒中の警告サインかもしれない」と受け止め、脳の検査をしておく方が無難だといえます。
- 入院した患者さんのめまいの原因の大半が耳鼻科の病気だったことは、すでに説明しました。では「めまいは耳の異常のせいで一時的なものでしたから、もう心配はいりません」といってよいのでしょうか。耳性めまい患者の66%が高血圧症、27%が糖尿病、50%が高脂血症、39%が心臓病だったことです。こうした頻度は、脳卒中の人たちの合併症の頻度とよく似ています。既往歴では、32%が過去に脳梗塞や脳出血を起こしていたことです。
- これらの耳性めまいの人たちを1〜3年間追跡調査をすると、期間内に12%が脳梗塞を起こしたことです。耳性めまいと脳卒中の間に密接な関係があることを示しています。耳性めまいの原因は主に「良性発作性頭位性めまい」「前庭神経炎」「突発性難聴」「メニエール症候群」などですが、これらは一般に循環器病ではないと考えられています。ただし、これらの病気の原因がはっきりしているとは言い難く、その背景に血液の循環障害が関係している可能性は否定できません。興味深いことに、耳性めまいの治療にもっともよく使われるのは循環改善薬で、実際に有効な場合が多いのです。
- 35)脱・思い込みめまい診療 めまいは内耳とは限らない 中山杜人(額田記念病院内科):著 新興医学出版社
- http://shinkoh-igaku.jp/mokuroku/data/185.html
- 近年、「良性発作性頭位めまい」(以下BPPV)の病名が広く知られることとなり、全めまい症例の50〜60%近くがこの疾患という意見が出るほどである。一部の内科医の間ではめまいの80〜90%はこの疾患が占めるという極端な考えすらある。高齢化が進む社会環境のなか、最近の糖尿病とその予備軍の人たちの右肩上がりの増加を含め、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙などの危険因子を持つ中高年の人たちは、BPPVと鑑別困難な眼振所見を示す「中枢性発作性頭位めまい」を起こしやすい。
- 高齢者や危険因子を抱える中年の人たちは、一見BPPVのようにみえても、動脈硬化を背景にして、後日一過性脳虚血発作や脳梗塞、狭心症、心筋梗塞を起こすことが時にある。
- 36)Risk of Vascular Events in Emergency Department Patients Discharged Home With Diagnosis of Dizziness or Vertigo Anthony S MD et.al:ANN Emergency Med.2011;57:34-41
- 救急外来にてただのめまいと診断され帰宅した全患者31159名。2005年1月〜6月の期間の間でのその後の経過について調査を行った。
6ヶ月間の各累積危険度は以下のとおり。
脳血管障害・・・0.63%(95%CI 0.55〜0.82%)
心血管障害・・・0.32%(95%CI 0.26〜0.38%)
脳血管障害を続発した患者は30日以内の発症がもっとも多かった。
- 37)Risk of Stroke in Patients Hospitalized for Isolated Vertigo a Four-Year Follow up ~Ching-Chin Lee, MD et.al:Stroke. 2011;42:48-52
- めまいの診断がなされた患者3021名の群と虫垂切除術がおこなわれた対象群3021名の群において、その後4年間の追跡調査を行い、脳梗塞の 発症につき検討をおこなった。
- めまい群のほうが、対象群よりも3倍の発症危険性がある。
めまい症状出現後1年以内がもっとも発症する可能性あり。
- 38)国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス [30]めまいと循環器病
- http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/general/pamph30.html
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- 首の異常から
- 首の筋肉の緊張が強い人で、とくに左右どちらかの側の筋緊張がより強いとき、めまいが起こることがあります。首の筋緊張によるめまいの多くはフラフラ感ですが、回転性の要素が加わっている場合もあります。
- このフラフラ感はいつの間にか起こり始め、長期間続くのが一般的です。首の筋肉は肩や頭とつながっていますから、首の筋緊張は肩や頭の筋肉も緊張していることを意味します。肩の筋肉の緊張は「肩こり」、頭の筋肉の緊張は「頭痛」「頭が重い」という症状になって現れます。ですから、首の筋緊張異常によるフラフラ感の人は「頭が重い」という症状を訴えることが少なくありません。「フラフラするし、頭が重いから、脳に異常があるのではないか」と悩んでいる人が案外多いのです。
- 39)頚性めまいの重要性 高橋 祥日農医誌 65巻1号 15〜24頁 2016.5
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/65/1/65_15/_pdf
- めまい患者で最多の診断は、頚性めまいで89%を占めた。今回の検討ではめまいの性質として、浮動性めまいが8割を占めていた。
- 頚・肩筋群の過緊張や緊張型頭痛を伴う場合には、筋弛緩薬による是正が最も重要であり、治療により1週間以内にめまいが消失あるいは明らかに改善した。頚性めまいの診断に関しては、日本平衡神経学会(1987)の「頚部に原因があり、多くの場合、頚の回転、伸展により誘発されるめまい、平衡感覚の異常」、「一定の頚部運動により反復性に起こるめまい」、「頚部の症状、特に頚部神経痛、交感神経圧痛、自律神経症状を伴うめまい」、「頚部からの異常な求心性inputで惹起されるdizziness, imbalanceで、前庭の器質的機能障害の認められないもの」、「頚部以外にめまいの原因となる障害がない」とする定義を参考とした。
- 今回の1,000例の検討において、厳密な診断基準の下で良性発作性頭位変換めまい(BPPV)と診断し得た症例はわずか0.3%に過ぎなかった。治療方法が全く異なるため、頚性めまいとBPPVとの鑑別は臨床上非常に重要と考える。
- 40)繰り返す難治性めまいでは「首」を疑え 高橋 祥 日経メディカル
- https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201701/549748.html
- 何度も再発する難治性めまいでは、首の疾患を疑った方がよい。頸部疾患を背景に発症する頸性めまいの可能性が高いからだ。頸性めまいとは、頸部以外にめまいの原因となる脳疾患や全身性疾患が認められない患者において、肩や頸部に負荷が掛かることで起こるめまいのことを指す。
- 1000例のめまい患者のうち、90%(899例)が頸性めまいだった。頸性めまい発生のメカニズムには諸説ある。例えば、肩こりとして表現される頸部筋群の異常緊張の情報と他の前庭中枢への情報のミスマッチからめまいを生じるという説や、頸髄に存在する前庭脊髄路や上行性神経路の脊髄小脳路が頸髄で障害されることによるといった説、後頸部交感神経が活動を亢進させることで椎骨動脈の循環不全を招き、その影響が内耳にも及んだ結果としてめまいが発現するという説、椎骨動脈が頸部組織で圧迫されることで循環不全を起こした結果という説などがある。
- 41)国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス [30]めまいと循環器病
- http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/general/pamph30.html
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- 血圧が下がりすぎて
- 血圧が高いのを心配しても、血圧の下がりすぎを心配する人は案外少ないようです。しかし、下がりすぎは上がりすぎと同じくらい怖いのです。
- 血圧が200/100mmHgぐらいに上がって2〜3時間しても、普通の人はケロッとしていて痛くもかゆくもないはずです。ところが血圧が50/20mmHg程度に下がり、それが2、3分続けば、気を失うか、フラフラして立っていられなくなるでしょう。普段より大幅に血圧が低下したとき、最初に出る症状はフラフラ感です。血圧は、心臓から出た血液を全身に運ぶのに必要な圧力ですから、血圧が低くなりすぎると臓器に流れる血流量が減ってしまいます。
- 脳には自動調節能と呼ばれる安全装置が備わっていて、少しぐらい血圧が下がっても脳へ流れる血流量が減らない仕組みになっています。しかし、血圧があまりにも低くなると、脳の血流量が減って脳が酸欠状態になり、平衡中枢がうまく働かなくなって、結果としてフラフラ感が出現するわけです。
- 立ちくらみは、起立性低血圧などによって脳血流量が一時的に減るために起こる瞬間的なめまいです。降圧薬をのみすぎて血圧が異常に低くなってもフラフラ感が起こります。高血圧症で降圧薬を服用中の患者さんが「最近どうもフラフラする」といって来院した場合、血圧の下がりすぎが原因であることが少なくありません。こうした患者さんでは服用中の降圧薬をやめたり、大幅に減らしたりするか、ほかの薬に変更すると、フラフラ感が数日でよくなります。
- 42)新しい機能性めまい疾患「持続性知覚性姿勢誘発めまい」について 新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 堀井 新
- https://www.niigatashi-ishikai.or.jp/newsletter/academic/201804241248.html
- めまい症状が3か月以上持続する慢性めまいに対し2017年にめまいの国際学会であるBarany学会は持続性知覚性姿勢誘発めまい(Persistent Postural Perceptual Dizziness,PPPD)という慢性に経過する機能性疾患を定義した。
- 現在、各種平衡機能検査、画像検査、心理検査などで精査しても原因がはっきりしない場合、「めまい症」という疾患名が与えられる。日本の統計では、めまい症はめまいを訴える患者の20〜25%におよぶ。PPPDにはSelective Serotonin Reuptake Inhibitor(SSRI)を用いた薬物治療や前庭リハビリテーションあるいは認知行動療法などの精神療法が有効である。
- 診断基準にもあるがPPPDの特徴は、(1)慢性の浮遊感で、(2)何らかの急性めまいエピソードが先行すること、(3)立位、体動、視覚刺激による症状の誘発が見られること、である。他の前庭疾患や精神疾患を合併する場合もあるが、これらの症状が合併する前庭疾患や精神疾患のみでは説明できないこともポイントである。
- PPPDは以下の基準A〜Eで定義される慢性の前庭症状を呈する疾患である。診断には5つの基準全てを満たすことが必要である。
- A.浮遊感、不安定感、非回転性めまいのうち一つ以上が、3ヶ月以上にわたってほとんど毎日存在する。
- 症状は長い時間(時間単位)持続するが、症状の強さに増悪・軽減がみられることがある。
- 症状は1日中持続的に存在するとはかぎらない。
- B.持続性の症状を引き起こす特異的な誘因はないが、以下の3つの因子で増悪する。
- 立位姿勢
- 特定の方向や頭位に限らない、能動的あるいは受動的な動き
- 動いているもの、あるいは複雑な視覚パターンを見たとき
- C.この疾患は、めまい、浮遊感、不安定感、あるいは急性・発作性・慢性の前庭疾患、他の神経学的・内科的疾患、心理的ストレスによる平衡障害が先行して発症する。
- 急性または発作性の病態が先行する場合は、その先行病態が消失するにつれて、症状は基準Aのパターンに定着する。しかし、症状は、初めは間欠的に生じ、持続性の経過へと固定していくことがある。
- 慢性の病態が先行する場合は、症状は緩徐に進行し、悪化することがある。
- D.症状は、顕著な苦痛あるいは機能障害を引き起こしている。
- E.症状は、他の疾患や障害ではうまく説明できない。
- 症状は、1ヶ月のうち15日以上存在する。ほとんどの患者は毎日あるいはほぼ毎日、症状を自覚する。症状は、その1日の中で時間が進むにつれて増強する傾向にある。
- 基準Bの3つの増悪因子すべてを経過中に認める必要があるが、それらが同等に症状を増悪させなくてもよい。患者は、前庭症状の不快な増悪を最小限にするために、これらの増悪因子を回避しようとする場合があり、そのような回避が見られたときはこの基準を満たすと考えてよい。
- a.立位姿勢とは、起立あるいは歩行のことである。立位姿勢の影響に特に過敏な患者は、支えのない座位で症状が増悪すると訴えることがある。
- b.能動的な動作とは、患者が自ら起こした動作のことである。受動的な動作とは、患者が乗り物や他人によって動かされることである(例:乗り物やエレベーターに乗る、馬などの動物に乗る、人ごみに押される)。
- c.視覚刺激は、視覚的環境の中の大きな物体(例:行き交う車、床や壁紙のごてごてした模様、大画面に表示された画像)の場合もあり、あるいは近距離から見た小さな物体(例:本、コンピュータ、携帯用の電子機器)の場合もある。
- 43)持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)の診断と治療
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/123/2/123_170/_pdf
- 持続性知覚性姿勢誘発めまい(Persistent Postural―Perceptual Dizziness, PPPD)は慢性めまいを主訴とする疾患で、2018年改訂のWHO国際疾病分類ICD―11に新規収載された日本のめまい統計ではめまい症は20〜25%におよぶが、われわれの調査ではめまい症の約2/3がPPPDであり、慢性めまいの原因疾患としては最多であった慢性の平衡障害を示す疾患としては、一側前庭障害の代償不全、両側前庭機能障害、加齢性平衡機能障害、心因性めまい、中枢変性疾患などが挙げられる。多くの場合、視覚刺激による増悪といったん誘発された症状が長期間持続する点で鑑別できる。SSRI/SNRIに関しては、抑うつや不安症の有無にかかわらず有効であり、精神作用以外の奏功機序が考えられている。投与量はうつに用いられる量の半量程度で有効とする報告が多い。1/4程度は腹部症状の副作用により内服困難で、奏功率は70%程度である。
- 44)発症頻度第2位、実は「原因不明」とされていた「めまい」の正体
- https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67600?page=3
-
- PPPDとはどのような病気ですか?
- 何らかの急性めまいに続いて起きてくる、慢性的な持続性のめまいです。発症のきっかけは耳石のずれ(良性発作性頭位めまい症)や炎症(前庭神経炎)など様々ですが、慢性化した時点(回転性から非回転性のめまいになった時点)で、耳石のズレや炎症は改善しているにもかかわらず、症状が続いているのがこの病気の特徴で、病態解明が待たれるところです。めまいを診る専門機関では、良性発作性頭位めまい症に次いで多い(15〜20%)ことが分かっています。